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日本民族学の祖

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 医師であり博物学者であったドイツ人、フィリップ・フランツ・バルタザール・フォン・シーボルトの没後150年記念展が、国立歴史民俗博物館などで相次いでいる。2度の来日で収集したコレクションはとてつもなく幅広く膨大で、幕末日本のあらゆる階層の暮らしのタイムカプセルだ▼唯一西洋に開かれた窓であった長崎出島に着任したシーボルトは、薬草を手始めに植物に関心が高かった。江戸参府の機に我らがカッコソウも、和紙にはさまれた標本を入手している。日本の本草学の高度さを知っており、きざみ煙草色々や歯磨き粉梅見散、伊吹山もぐさなども無視しない▼ニホンオオカミも数頭、鳥は雌雄、オトシブミは好きだったらしく、海藻に貝、鉱物各種の標本まで、未知の国の森羅万象を手に入れた。家屋模型、染織衣類、陶磁漆工木工金工、仏像、彫刻、絵画、装身具、玩具、仮面、各種道具、銭貨、そして地図も。「日本博物館」構想もあった▼しかし人間は到底無理だ。門人たちや通詞、絵師はもちろん、彼は愛する妻タキや娘イネとも別れねばならなかった。息子を同道して再来日したシーボルトに、タキは会おうとしなかった。人情の機微は、科学でままならない。(
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