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人とともに暮らす鳥

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 きょうから16日までは愛鳥週間。野鳥たちの観察を通じて、私たちが今、どんな風土の中で暮らしているのか、改めて見つめる季節である。水を張った田の上を低く飛び交うツバメたちの姿に、ほっとするような気分を味わうのもちょうど今ごろで、家屋の軒下の巣の中で大きく口を開けたひなたちが親鳥にえさをねだる愛らしい姿にも、間もなく出会えるはずだ。

 カラスやヘビなどの天敵から身を守り、より安全に子育てをするために、人の生活環境を巧みに利用しながら暮らしているツバメである。それだけに、私たちとの距離感は物理的にも心理的にもごく近い。そんなツバメについて、日本野鳥の会は昨日、2013年から15年にかけて実施してきた全国調査の結果をホームページで公表した。

 ツバメの子育ては農村部に比べて都市部の方が難しく、巣立ったひなの数を比べてみると都市部では約3・9羽と、全国平均の4・3羽より0・4羽少なくなっている。都市部には桐生市やみどり市といった地方都市の市街地も含まれる。

 また、子育て失敗の原因について、その内訳をみると、都市部では「人による巣の撤去」が全体の約1割を占めているのだという。郊外や農村部に比べると約7倍も高いと、そんな傾向も見られるようだ。人と共存してきたはずのツバメだが、「人そのものが子育ての脅威になりつつある」のだと、野鳥の会では指摘している。

 ツバメの糞害に悩む声も、たしかに聞く。昔のように下が土ではなくコンクリートやタイル張りとなれば、それもまたやむを得ないと思わせる部分もある。ただ、巣の下に箱などを置いて、何気なく世話をしている人びとの心遣いに触れると、生き物へのやさしさが伝わるようで気持ちがやわらぐのも事実。

 ツバメが生きてゆくには、水分補給の水辺や、巣をつくるための材料、ひなを養うだけの十分なえさが求められる。春、東南アジア方面から遙々ツバメが飛来して営巣するということは、裏を返せばその地域に彼らを養うだけの環境や人の精神がまだ残っている証しでもある。

 ツバメばかりではない。小さな生き物たちの変化は、私たちの生活環境がいまどんなふうに変わっているのか、それを探る指標にもなる。薫風に吹かれながら、ツバメたちの飛び交う空を眺めるのも、またいいものだ。
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