熊本地震の被災地で医療支援を行うために派遣されていた桐生厚生総合病院(丸田栄院長)の医療救護班4人が、任務を終えて帰還した。被災地での経験から、外科診療部長の高良大介さん(41)は「被災地では想定外の出来事が起こりうる。いかに訓練に組み入れて対応できるかが大切」と改めて訓練の重要性を感じたという。
高良さんを中心に、看護師の古澤悟さん(38)、岡本慶太さん(29)、薬剤部の大手直樹さん(38)の4人は、県が派遣する群馬県救護班の第6班として5月6日に被災地に向けて出発。7~9の3日間、熊本県阿蘇市の医療機関で任務にあたり、10日に帰桐した。
高良さんと大手さんが派遣されたのは、阿蘇医療センターに設置された「阿蘇地域災害保健医療復興連絡会議(ADRO)」の本部。全国から来る医療救護班の人員管理や医療器具の管理などを行ったという。
派遣された地域の病院機能は復旧しており緊急を要する場面はなかったが、高良さんは「避難所にはまだ多くの人がいる。避難者の健康・衛生面をフォローするための保健師が必要とされている」と、支援の需要と供給の難しさを肌で感じた。
災害急性期でも活動できる機動性を持った桐生厚生総合病院DMAT(災害派遣医療チーム)のリーダーでもある高良さん。「群馬で大災害が起きた場合は、自分が支援を受け入れ、判断する立場になる。動揺もある中で、さまざまな想定を考えていかなければならない」と話す。
DMATで業務調整員を務める大手さんは「ADRO本部に入れたことはとても勉強になった。医療ニーズや避難所の状況などの情報収集をはじめ、経験しないとわからないことばかりだった」という。
看護師の2人は阿蘇温泉病院と阿蘇医療センターで医療支援を行った。多くの病院スタッフが被災しながらも仕事を優先している状態で、スタッフだけでなくその家族もストレスを抱えていたと感じた。古澤さんは「被災者はもちろん、被災しながらも働く人たちのメンタルケアについて学んでいきたい」と今後の課題を語る。
そんな現場で「派遣された医療スタッフの受け入れ態勢が整っていた」と感じた岡本さん。「いざというときは受け入れ側となり医療従事者として仕事を優先することになる。普段から家族とも話し合って備えたい」と話した。
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