桐生市広沢町三丁目で酪農業を営む夫婦がイノシシに襲われ、丹羽正雄さん(67)が死亡する事故が発生してから11日で1カ月がたつ。イノシシなど野生動物が日常的に人里に出没する桐生地域で「二度と事故が起きないよう、野生動物に近づかないことが大切」と話し、えさとなる生ごみを放置しないなど人里に動物を寄せ付けない環境づくりの大切さを伝える桐生猟友会専務理事の山鹿英助さん(76)。自身の経験から「わなは危険が伴う。必ず市や猟友会に相談を」と呼びかける。
桐生地域では林縁部や中山間地域を中心に、イノシシ、シカ、サルなどが人里に出没。農作物被害だけではなく、車への衝突や通学中の子どもとの遭遇など生活に大きな影響を及ぼしている。
11月の事故では、個人の敷地内に仕掛けた捕獲わなにイノシシがかかり暴れ回っているのを丹羽さんが発見し、農業用フォークで押さえ込もうとしたところ、イノシシが突進してきたとみられている。
わなにかかると興奮し攻撃的に
捕獲わなにかかった動物は興奮して攻撃性が高まり、人間を見つけると暴れ回る。山鹿さんは以前、山中で脚など体の一部をくくり捕らえる「くくりわな」を仕掛け、かかったイノシシがわなを固定していた丸太を引きずり暴れ回る場面に遭遇した。死に物狂いで走るイノシシに「本当に怖い思いをした。ともすると襲われていた」と振り返る。
桐生猟友会ではわなが外れてしまう可能性も含め、野生動物の危険性を考慮して「くくりわな」の使用を中止。おりでの捕獲を中心にし、「おりが一番安全。個人でわなを仕掛ける場合は安全のため必ず市林業振興課か桐生猟友会に相談を」と呼びかける。
追いかけないで大声出さないで
また、イノシシなど野生動物に遭遇した場合、「動物は人間を怖がっていて、特に目玉を嫌がる。静かにじっとにらみつけることが基本」で、移動するときは動物に背中を向けず後ずさりする。身を守るために大切なのは「追いかけたり大きな声を出さないように」と注意を促す。
地域住民が日常的にできることとして挙げられるのが「野生動物にえさを与えないこと。隠れ場所をなくすこと」。生ごみや畑の残渣(ざんさ)は格好のえさとなるので、放置しないようにする。やぶや下草が生い茂ると動物たちの隠れ場所になりやすいので、刈り取って見通しをよくするなど呼びかけている。
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