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悲恋の復活

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 茶箱を開けると防虫剤のにおいがムッと立ち上った。薄紙をそっと取ると、次々現れたのは美しい人形8体。桐生からくり人形芝居「吉祥寺恋之緋桜」に登場する、八百屋お七と寺小姓の吉三郎が各2体、小坊主3体と丁稚の豆松。傷みもなく、立ち会った人たちから感嘆の声が上がった▼2004年5月のこと。当時桐生からくり人形保存会は東大工学部で講義・実演したり名古屋のトヨタテクノミュージアムに出張したり、目覚ましく活動の幅を広げていた。自由な発想と遊び心による江戸のものづくりが、最先端のバーチャルリアリティーや産業技術からも注目された▼座敷からくりや山車からくりは各地にあるが、からくり人形芝居が残るのは桐生のみ。浅草奥山から伝わって織物機械の技術がありスポンサーがいて、天満宮御開帳臨時大祭ごとに各町会が競った出し物が、御開帳が行われなくなっても復活上演されている。特異なことだ▼「八百屋お七」も眠りから覚めて、精巧なレプリカが舞台をつとめる運びとなった。現存する桐生からくり芝居は仇討ちか決闘か恋物語か。恋しさ逢いたさに火付けし櫓に登って半鐘を叩くお七、火事と喧嘩を華とした時代の物語がいとしい。(
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