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上原教授に繊維学会賞、群大から36年ぶり

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 繊維学会(会長=鞠谷雄士東工大教授)は今年度の年次大会で、群馬大学理工学部の上原宏樹教授(48)に第43回学会賞を贈る。群大からの受賞は第7回以来36年ぶり。「溶融延伸による高性能繊維・膜の創製」をテーマに研究に取り組んできた上原教授は受賞を喜ぶとともに、「織都桐生の地場産業に貢献したい」と語っている。

 繊維学会賞は「繊維科学について独創的で優秀な研究を行い、さらに研究の発展が期待される研究者」に対して贈られる。今年度は上原教授一人で、7日に東京・江戸川区のタワーホール船堀で開催される学会で受賞式があり、翌8日に受賞講演を行う。

 上原教授は神奈川県出身。東京理科大学、同大学院、米国マサチューセッツ大学高分子科学科研究員を経て博士課程を修了、1997年に群馬大学工学部へ。理工学部化学・生物化学科の高分子構造物性研究室で「高分子鎖を引き伸ばして強い繊維やフィルムを作る」研究を行っている。

 独自に開発した溶融延伸法は、従来ネガティブな性質とされてきた高分子鎖の絡み合いを、発想を転換して応力の伝達点として利用することで分子配向し、さらにナノ構造制御法へと発展。有機溶剤などの薬品を一切用いない「地球にやさしい」加工法でもある。

 高強度、高性能、高機能な繊維や膜は産業的有用性も高く評価され、科学技術振興機構から「特許群」形成支援対象に指定された。これまで釣り糸が大手メーカーから市販されたほか、投票用紙やトナーリボン、リチウムイオン電池膜、糖尿病センサー、水質浄化フィルター、ロボット材料など、また快適衣料分野への寄与も期待される。

 前年度まではキヤノン財団「産業基盤の創生」の助成を受け、超高分子量ポリエチレン繊維に撚糸(ねんし)技術を融合させた、桐生発の超高強度繊維の創製に取り組んだ上原教授。群大でも繊維の研究者は少ないだけに「桐生から繊維の復興を。新しい技術でものづくりをしたい企業など、地場の役に立ちたい。技術相談に応じます」としている。
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