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ルールづくりの過程

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 新たに生まれた技術を駆使した製品をどう扱うのか、使用する人の倫理観が試される。

 12年前、群馬大学の研究者たちが中心となって、e自警ネットワークという組織を立ち上げた。市販の小型カメラとパソコン、それに教員らが開発したソフトを組み合わせることで、安価な防犯システムをつくり、その普及を図るのが狙いである。

 自分の家だけでなく、より広い地域の安全を確保しよう。そのために公共空間である道路にまでカメラの視野を広げようという思い切った考え方を打ち出し、警察や行政、商店街などとも協力してさまざまな実験的な試みを展開してきた。

 防犯カメラの設置運用ガイドラインといった大枠のルールもまだ整備されていなかった時代のこと。個人のプライバシーに配慮しながら、不特定多数の人びとが利用する施設や公共空間の安全をどうやって担保するのか。監視によるストレスや不安を減らそうと、ソフトの改良と運用ルールの見直しを繰り返してきた。そんな経緯がある。

 桐生市内の商店街で、施設の敷地内にカメラを設置する際、道路の一部が映りこむことに対し、「これは許されるのか」と、関係者たちが議論をたたかわせていたのを思い出す。警察への情報提供についても、話し合いの中でルールづくりが進められた。法律や条例ができても、運用のルールはそこにかかわる人びとがつくるしかない。活動への信頼は徐々に深まり、その活動はいまも続いている。

 今年、世間を騒がせた無人小型航空機ドローンもまた、新しい技術だ。悪用のニュースが多い分、危険性が指摘されるが、利用法しだいでは、人の暮らしに役立てることもできる。

 桐生・みどり地区でも実際に活用する団体が登場しており、先日は、両毛漁業協同組合が高津戸ダム湖のカワウ対策のために導入を試みた。構造物維持管理研究会では、橋脚など公共建築物の検査に導入できないかと具体的な行動を始めている。

 関係者が集まり、利活用の方法を考える桐生ドローン利活用研究会も設立された。改正航空法が施行され、桐生・みどりの市街地の大半が飛行禁止空域になったが、これは住民生活の安全を守るためにも必要なこと。利活用へ、これからどうルールをつくり、ドローンという技術に対する信頼と合意を形成していくのか。試される局面である。
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