夏休みの大会が花盛りのころに、競技会場と学校を自転車で行き来する中学生を見かけた。
きちんと一列で走行し、ヘルメットをかぶり、私語も交わさずに、たった一つの例外を除いて、教えられたことをしっかり守れる模範的日常がありありとわかる一団だったのである。
一つの例外とは、彼らは路側帯に沿って右側を走っていた。
道路交通法では自転車は軽車両である。路側帯では容認される幾つかの条件はあるものの原則的に自転車は左側。法改正によって、違反に対する罰則が徹底されつつある昨今である。
確実に改善されてきた。しかしながら、端を走れば自転車は右側通行が許されると思っている人はいまでも少なくない。
裏道だったこともあり、中学生たちにはおそらく、逆走という意識はなかったのだろう。
交通ルールは歩行者も自動車もすべての立場で守らなければ意味がない。そう考えるとすべて義務で成り立っているように思えるが、歩行者や自転車などの弱者の場合は、それを守ることが事故に遭う確率を減らすというデータに基づいている。そのことを忘れてはなるまい。
わき道からきた車が広い道を左折するときに、逆走の自転車が目いっぱい端に寄って近づいて来るのに気づくと運転者はヒヤッとする。こんなケースはハンドルを握る人なら、誰しも体験していることである。
高齢者ドライバーがますます増え、運転の単純な誤りや見落としに、いっそう神経を払わなければならない時代になった。
かつて自転車は歩行者と車の中間的存在にあって、道路環境整備が遅れていた分、ある程度の自由度が認められてきた経緯はあるが、それでは事故が防げなくなって、求められてきたのが軽車両という自覚である。
さて、中学生の自転車に関していえば、ふだんの彼らはしっかり交通ルールを守っている印象である。彼らが自転車を正しく深く理解すれば、社会を変え得る力にもなると思うのだ。
難しいことではない。すでに身についている日常を少し徹底していくだけである。例えば部活動の行き帰りに指導者がもう一回そのことを念押しするだけでいい。きちんとした列にはきちんとしたリーダーがいる。すぐに改まるはずである。
裏道の交通安全は高齢者時代の重要課題だ。大人も子どもも互いの手本になれるといい。
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