ぴっかぴかの秋晴れの昼下がり、ふうわりふわりとチョウが舞っていた。優雅にゆるい羽の動きで、ときおり滑空する。羽は白地に黒い筋が入って薄赤の斑紋。移入種・アカボシゴマダラである。行く先が気になって追いかけてみたけれど、塀を越えて向こう側へ。あっけなく見失ってしまった▼ふと、われに返って「追いついて捕まえたとして、一体どうするつもりだったのか」と自問する。殺すのは忍びないし、産卵を見かけてしまったら余計に困る▼「ヒトが意図的に持ち込み、放野したであろう」といわれ、着々と生息域を広げているアカボシゴマダラやホソオチョウ。在来の自然環境に影響を与えていたとしても、一つの命にかわりないものだから対応が難しい▼さて今夏、国内で初めて確認されて話題になったヒアリは「しかるべき機関に連絡して、駆除してもらわねばならない」。その場に居合わせたら自分もそうする▼ヒトの安全な暮らしとか、生態系の維持とか、さまざまな次元のたくさんの理由で駆除される生物がいる。理解しているけれど、生き物としての重みや価値は別問題で、どれも一つの命にかわりない。そのことだけは忘れずにいたいと思ったのだ。(並)
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