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虫の秋

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 夏場活躍してくれた掃き出しの網戸に、カマキリが1匹、とまっていた。11月に入り、朝晩こそ冷え込む日が増えたものの、風のない日中ならば、日だまりはまだ暖かい。午後の日差しを受け、カマキリは前脚の大きな鎌を折りたたみ、じっとたたずんでいる▼亡くなった祖母は、カマキリのことを「おがみじょうろう」と呼んでいた。「おがみ」は拝む姿に似ているからだろう。では「じょうろう」とは何だろうと、子どものころ不思議に思った。それが蟷螂のことだと分かったのは、高校生のころだったか▼カマキリの鎌は本当に鋭くて、人の皮膚にもしっかりと引っ掛かる。以前、公園の木でツクツクボウシをがっしりと捕まえているカマキリを見つけたが、暴れるセミをよく押さえ込めるものだと、しばらく見入った。捕まえる瞬間だけ素早く、捕らえてからはまたゆっくり▼カマキリは秋の季語。産卵の季節でもある。そんなことを思いながら、取り込んだ洗濯物のТシャツを見ると、すその方にカマキリの卵が産みつけられている。申し訳ないとは思いつつ、生地から卵を外して、庭に置いた▼カマキリは冬越しせず、秋の深まりとともに死んでゆく。今年もそろそろ見納めの時期だろうか。(
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