無数に降り注いだガラス片が突き刺さったか、あるいは内なる狂気が炸裂してコートやドレスから突き出てきたのか。ライトを跳ね返して光は身体から四方八方に飛び散り、彼方に広がっていく。とても孤独で、すごく高貴▼アンダーカバーの２０１５―１６秋冬、「ＨＵＲＴ（傷）」をテーマにしたコレクションの最後に登場した服たちは、あまりに痛々しくも孤高で、戦闘的でもあり、ショー以外、実際に着ることは不可能だ。だから時代の感性であるファッション、日常を覆す表現なのだと思う▼「先のことなど全く考えず、学生時代に根拠なき自信と反骨精神を武器に始めた」という高橋盾さん。その独自の世界観をファッションに加え映像や写真、ドール、小物、デザイン画などで構成した展覧会が東京オペラシティアートギャラリーで開催されている▼桐生出身のデザイナー高橋さんのアンダーカバーは、世界中から注目されるブランドだ。はや２５周年を迎え、９４秋冬シーズンの東京コレクションデビューから現在までの創作を美術館で見る、初めての機会だ▼内と外、美と醜、光と影、自と他、混沌と調和。歪んだ優雅。自己批評。刺激に満ちた迷路から、ようやく脱出してきた。（流）
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