Quantcast
Channel: ウェブ桐生タイムス
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2430

命の授業

$
0
0

 医師になろうと思ったことは一度もない。縁遠い存在で、親しい人にもいなかった。だからこそ、楽しみにしていた。医師を目指す中高生向けの公開授業。未知なる世界をのぞかせてもらった▼樹徳中高一貫校の生徒約30人が受講した医療倫理講座。哲学者でもある同校の福田肇教諭が、哲学者仲間の塩谷賢さん、弁護士の小林玲子さん、音楽家の渡辺敏晴さんを招いて授業した▼治療がなく激痛に苦しむ終末期の患者に、「この状態を終わらせて」と懇願され、薬物投与で死なせてしまった研修医の事例。「患者を尊重する良い医師」「それでは殺人だ」「他の方法はなかったのか」などと生徒たちが議論する▼積極的に死をほう助する「安楽死」に対し、自然な死を迎えるまで生の質を上げる「尊厳死」。だが、両者に明確な定義があるわけではなく、医師が刑事責任を問われる事例も相次ぐ▼「想像してほしい。患者さんが、みなさんのお母さんだったら。医師の薬物投与で亡くなり、遺体で自宅に帰ってきたら…」「医師は単なる技術者じゃない」。熱いメッセージを送るゲストたちを、食い入るように見つめる生徒たち。受験勉強と違い、正解のない問題。有意義な授業だった。(
関連記事:


Viewing all articles
Browse latest Browse all 2430

Trending Articles