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冬の緑

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 畑の脇に延びる狭い土の小路を通り抜けて出勤する。その日の風の強さや湿気、光の加減によって、足元の土の表情は毎日変わる。その変化を眺めるのが楽しみでもある▼真冬、冷え込んだ朝には、地面を押し上げるように霜柱が成長する。踏まずにはおられず足を忍ばせると、ざっくとした感触が足裏から伝わってくる。子どものころから慣れ親しんだ寒い冬の感触▼どんなに寒くなっても、小路の周辺には必ず緑がある。この季節、濃い緑色の細長い葉はヒガンバナ。秋の彼岸のころ、あでやかな赤い花を咲かせていたがそのときは葉などなくて、土から伸びた黄緑色の茎の上に花ばかりが咲いていた▼葉の存在に気づくのは、決まって丈の高い草たちが枯れた後、冬のいま時分だ。つややかな葉が輝いて見える。光を受けてせっせと光合成し、養分をつくって球根を増やし秋の開花に向けた準備をする。もの言わぬ、黙々とした営み▼寒い中でも、地面にへばりつくように葉を広げている植物は意外と多い。赤や黄に染まった花や実がないときは存在に気づく機会さえ少ない野草だが、春に向けた足どりは着実。自ら移動する機能や言葉を持ち合わさぬ命のしたたかさとたくましさを思う。(
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