オバマさんにぜひ見てほしいものがある。原爆投下約3時間後の広島市街の写真だ。米軍機が撮影した巨大なきのこ雲ではない。その下で実際に何が起きたかを伝えている▼元中国新聞カメラマンの故松重美人さんが、爆心地から2㌔離れた御幸橋西詰で撮った。熱戦を浴びてやけどを負った老若男女。地獄の光景に何度も撮影をためらう。涙でファインダーをくもらせながら、心を鬼にしてシャッターを押したと、松重さんはのちに振り返っている▼自分は娘の進学の関係で約2年前に同地を訪ねた際、広島平和記念資料館で見たその写真に衝撃を受けた。記録に残す使命感と、被災者を写す罪悪感。同業者の端くれとして、その葛藤が胸に響いた▼原爆投下から70年の節目を迎えた昨年8月6日には、この写真をもとにした特集番組をNHKなどが制作。「きのこ雲の下で何が起きていたのか」と題し、画像解析や生存者の証言で撮影当時の惨状を再現して注目された▼27日に現職米大統領として初めて被爆地を訪れることになったオバマ大統領。原爆慰霊碑に刻まれた「安らかに眠って下さい/過ちは繰り返しませぬから」という言葉を、どのような思いで受けとめるのだろうか。(針)
関連記事:
↧
きのこ雲の下で
↧