「ほら、区長バッチはねじなのよ。慌てて目打ちで穴開けちゃった」。上着を見せて朗らかに笑うのは、今年度、桐生市で初の女性区長に就いた長京子さん（７８）＝新宿二丁目＝▼見せてもらった区長バッジは、ピンを刺すタイプのものではなく、ねじ止め型。男性の場合はジャケットやスーツの下襟にあるフラワーホールに着ければいいのだけれど、女性の場合は、はてどこに？▼これまでの歴代区長は全員男性だったから気が付かないわけで、長さんも「何も不便に思うこともなかったんでしょうねえ」とにこやか。そのおおらかさと自分の洋服に躊躇なく穴を開けてしまう潔さが印象に残った▼振り返ると、高校、大学、前職ともに男性の多い環境に身を置いていた。にもかかわらず、「女性だから」と不便や不都合を感じた記憶が見つからない。もしかしたら周囲が気を使ってくれていたのかもしれないけれど、過剰な気遣いを感じたこともない。それって結構恵まれている▼自分にとっての「生きやすい場所」は環境や立場、状況によって変わるだろう。たとえ、それがどこであろうと、先を歩いて道を拓いた人と、周りでそれを支えた人がいたからこそできたもの。そんなふうに思うのだ。（並）
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