熊本地震の被害に対する地震保険の支払金額が、発生から1カ月を待たずに阪神淡路大震災の規模に近づいていると先日報道があった。全国各地で相次ぐ自然災害の知らせに触れる中で私たち住民も、また保険会社も、天災はいずれ自分の身にも降りかかるものだという認識を徐々に共有しつつあるようだ。
もう一つ、最近気になっている保険制度がある。それが自転車保険で、昨年から今年にかけて兵庫県や大阪府、滋賀県など関西地方を中心に、府県レベルで自転車保険の加入義務化を盛り込んだ自転車条例制定の動きが目に付くようになった。
7月から施行となる大阪府の自転車条例をみると、自転車保険の加入義務化に加え、交通安全教育の充実、高齢者のヘルメット着用、自転車の点検整備と、ポイントとなる項目が記載されている。府の教育委員会では、学校側が自転車通学を許可する際に保険加入を条件づけるといった動きも出てきている。
多くの人にとって自転車は子どものころから慣れ親しんだ身近な乗りもの。転倒を繰り返しつつ乗りこなし、実地経験を積みながら技能を上達させる。自動車のような免許制ではなく、安全運転講習を受ける機会もほとんどない。車検のような仕組みもないため、点検や整備は所有者に任されている。身近である分、乗り手にも油断が多い。
自動車ほどではないものの、最近は自転車の性能も向上している。最近は電動アシストのように体力のない人でも加速しやすく、スピードを保持し、坂道をのぼり、長距離走行できるような機能も一般化している。機能が向上し、機械が複雑化すればその分、故障や事故が発生したときに「人の手に負える」という感覚からは遠ざかる。運転者も歩行者も高齢化する中で、小さな衝突で命を落としたり、後遺障害に悩むといった事例も増えている。運動神経のいい若者がどんなに注意深く運転したとしても、事故に遭遇する可能性は残念ながら消えない。
保険をかければ安全性が向上するというわけではもちろんない。ただ、自発的に保険に加入することで、自転車の交通安全を意識するきっかけにはなる。自然災害のように、自転車事故もまた、必ず降りかかる災いとしてとらえた方がいい。ルールを守りながらいざに備える。交通インフラの整備も、こうした延長線上で進んでゆくはずだ。
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