草木湖畔に立つ、丸が連続した美術館。詩画作家の星野富弘さんは古希を迎えてなお創作意欲盛ん、ユーモアもあたたかく、開館25周年記念式典には熊本の美術館関係者も駆け付けた。取材を終えて前庭を通る。何かに呼び止められたような気がして足元を見ると、いたいた、四つ葉のクローバーだ▼「草、花、木、一つ一つにありがとうと言いたい」と富弘さん。「一つ一つ言っていたらヘンな人に見られるから、言いませんけど」と続けると、満場の客がドッと笑う。それも魅力で660万人超の心に届く。その「一人一人に感謝したい」とは盟友・聖生館長の弁▼感動と情熱と縁が連鎖して、唯一の姉妹館が熊本県芦北町に誕生したのはちょうど10年前。富弘さん夫妻や支援者たちも立ち会い、みずみずしい産声を聞いた。大きな「ぺんぺん草」が出迎えてくれ、加藤清正ゆかりの鉄砲隊が火縄銃で祝砲を上げた▼水俣の海に近い芦北には、身体が不自由になった人々の施設が多い。そこに、生まれ出たいのちを丸ごと抱きとって今日のすばらしさを寿ぐ、星野富弘美術館がある。熊本地震直後も開館していたという妹分も、辛いときこそ逢いたい、有り難い存在であると思う。(流)
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