桐生新町重要伝統的建造物群保存地区内に帽子メーカーが開業した。元機料店の石蔵を活用し、帽子職人が麦わら帽子やフェルト帽を手作りで生産する。工場として出発し、来年をめどに直接小売りも始めたい考えだ。
1920年(大正9年)に建てられた、本町二丁目の有鄰館そばにある旧津久井機料店の金筬(おさ)工場に入居して事業を始めたのは「com+position(コンポジション)」の齋藤良之さん(45)と大山了さん(49)。
埼玉県さいたま市出身の齋藤さんは古着店に勤務していたが、服好きが高じ、桐生市相生町の縫製業に転職して作る側に。独立後の2010年、コンポジションを設立。太田市の自宅に事務所を構え、ニット帽やヘアバンドなどを手掛けていた。事業拡大で手狭になり、委託加工先の多い桐生市内への移転を決断。「桐生でやるなら古い建物で」と1年間探し続けた末、納得の物件に出合った。
春日部市内で帽子職人として働いていた大山さんとは、仕事を通じた3年前からのつき合い。「一緒にやれば面白いものができる」と誘われた大山さんは「夢を持って仕事をできる」と応じた。
国内の帽子メーカーは減り続け、麦わら帽も半製品を輸入して型入れするだけのところも少なくない。麦わらや麻、紙を編んだブレードと呼ばれるテープ状の素材を縫う専用ミシンも生産が終わっており、入手困難な中で3台を確保した。大山さんが縫いながら、手の感覚だけで大きさを測って仕上げていく。
帽子の形を決める木型はアンティークのほか、渋川市や英国のメーカーに依頼してオリジナルを用意。ほかにない型で独自商品を生産する。型づけに用いるのりも環境に配慮して揮発性を避け、水溶性のものを使うなど細部までこだわっていく。
まずはOEM(相手先ブランドによる生産)で受注し経営基盤を固めた上で、工場での直接販売も手掛けたいと考えている。齋藤さんは「来年から小売りもできたら。いずれはミシンも増やし、若い職人を育てていきたい」と夢を語っている。
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