Quantcast
Channel: ウェブ桐生タイムス
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2430

銅メダルの価値

$
0
0

 鍛え抜かれたアスリートが全力を尽くし、躍動する姿は美しい。ただいまリオ五輪。各種競技を堪能し、日本の選手の活躍を心から楽しんでいる最中だ。

 もちろんメダルがすべてではないが、競技であれば到達したい目標は必要だ。やはり特別な意味を持つ五輪メダルである。

 まずは金銀。男子体操団体と個人、水泳、柔道。期待という重圧につぶされず、会心の結果を残したことをみんなわがことのように祝福してくれる。その様子にふれ、メダリストがいっそう感激し、懸命に思いのたけを語ろうとする姿も実にいい。

 大リーグ通算3000安打を達成したイチロー選手が「何かをすることで他人が喜んでくれることが大事だと再認識した」と語っていたが、大ベテランにしてようやくたどりついたこの心境は、おそらく若きアスリートの気持ちをも代弁しているはずである。また、目標に向かって積み上げてきた結果の価値は金も銀も銅も何ら変わるものではないとも受け止めたいのだ。

 とりわけ今回、銅メダルをめぐる攻防に「よくやったな」と納得できるものが多かった。

 たとえばお家芸といわれる柔道の場合、競技の発展で日本の国際的立場はどんどん変わりつつあるが、その中で今回は男女とも各階級で大活躍である。

 銅メダルという結果に無念さをもらす選手もいた。だが、競技の駆け引きが大事なことはふまえながらも、柔道の面白さは正面から向き合って一本を取りに行く姿勢があってこそという意地はどの選手も持っていた。

 重量挙げ、水泳、カヌー、卓球、それぞれのドラマがメダルの色の差を忘れさせてくれたことにも新鮮さを覚えたのだ。

 五輪はいま、ドーピング問題など、将来に向け、解決すべきさまざまな課題を抱えている。

 人は昔から数々の仕事を自らこなすことでそれにふさわしい体格を獲得し、よりよいものを目指し技を磨きあげてきた。

 そうした暮らしから次第に競技が独立し、現在の五輪へとつながってきた長い歴史。これを顧みれば、平和のうちに競い合える場を築いた知恵がメダルのありようも形作ってきたことは容易に想像がつくことである。

 だが、勝つこと以上に大切な美学があることも忘れたくはない。メダルは等しくすばらしいものだと、まずはそうした見方が定着するだけでも変わっていくものがあると考えるのだ。
関連記事:


Viewing all articles
Browse latest Browse all 2430

Trending Articles