Quantcast
Channel: ウェブ桐生タイムス
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2430

家族の愛、詰まった歌集 難病の妻のため夫が手作り

$
0
0

 桐生市川内町二丁目に住む今泉八重さん(79)が歌集「あしあと」を出版した。夫の良雄さん(82)がパソコンを使い、難病を抱える妻の足跡を残そうと手作りしたもの。挿絵には孫の優太くん、健太くんの絵も使われ、家族の愛の詰まった歌集に仕上がっている。

 4年前、治療方法も特効薬もない「多系統萎縮症」の診断を受けた八重さん。人形劇や手話、読書、オカリナなどさまざまな趣味を持っていたが、体の自由が少しずつきかなくなる中、最後に残ったのは高校時代から親しんできた「短歌」だった。2年前に短歌結社「風人」は退会したが「仕事の忙しさに遠ざかった時期もあったが、幸せだったのは『風人』に参加したことで、須田利一郎さんをはじめ、指導を受けられる環境が身近にあったこと」と振り返る。

 良雄さんがパソコンを駆使し、製作した歌集はA4判168㌻。タイトルは作者不詳の詩「海辺の足跡」から取り、表紙絵は八重さんがパソコンで描いた絵を縮小して重ねた。

 「母さんや精いっぱいに生きたかい生まれて来たことよかったかい」など母を詠んだ1992年の歌から、苦楽をともにした夫を気遣う今年の歌まで、四半世紀の八重さんの、家族の歩みをたどるような約580首を柔らかな筆文字の書体で印刷。良雄さんのお気に入りは庭のヤマボウシの木を詠んだ「やまぼうし枝いっぱいに花付けて今年伐られる事も知らずに」(2011年)「こんにちは今年もお逢いしましたねやまぼうしの花枝をふるわす」(12年)の2首だという。

 完成品を手にした時は「本当にうれしかった」と八重さん。これまでに185冊を作製し、友人や知人に配ったが、学生時代の同級生がわざわざ訪ねてきてくれる、うれしい出来事も。また、6月末には桐生タイムスの投書欄「なんでもダイヤル」に感動の声が寄せられ、「こちらが感動させていただいた。ぜひお礼を言いたいです」と話していた。
関連記事:


Viewing all articles
Browse latest Browse all 2430

Trending Articles