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温暖化の指標を持つ

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 こつこつと積み上げた形を崩すのは本意ではないが、変化に頑なであってもいけない。これはそんな日常の一例である。

 今年、袋のままで保管していた玄米に虫がわいた。自分で育てたり、知り合いの農家から譲ってもらったりで一年を賄ってきたから、米の扱いには十分注意してきたつもりだった。

 農家には土間がある。風通しのいい保管場所も持っているからそんなことはないだろうと思って尋ねると「玄米は大丈夫だ。精米した方に虫が出た」という返事。原因は暑さである。

 次は梅漬けのことである。ここ何年か、いちばん神経を使っているのがカビ対策だ。以前はそんなに気にすることもないままに、梅干しまで順調に仕上がった。しかしいまの事情は、あきらかに以前とは違ってきた。

 これから2カ月ほど先の話になるが、柿の実を干して並べると、カビが出るようになったのも最近のことである。原因は風が吹かないことと暑さである。

 本来ならそのころは木枯らしが吹き始め、落葉と共に虫の活動も終息する。しかし現実には北風が減って、晩秋になっても葉が落ちない木々は公園でよく見かけるようになった。生きていける環境があれば虫も眠らない。人の営みと季節のズレは年々顕著になっていると思う。

 1995年の地球温暖化防止京都会議のころ、温室効果ガス排出量の規制を自分自身の暮らしと結びつけて考えることは容易ではなかった。いまは、酷暑や豪雨や迷走台風、平地の生き物や山の生き物の分布の変化など、地球温暖化の影響は私たちの目の前にさまざまな現象をもたらしていて、個人の生活の中にその指標を持つことは十分可能になった。筆者の保存食品雑感はそのモノサシである。

 9月になって新米の頼りが届いた。あれこれ検討してみたけれど、家の中にはもう、安心して米袋を保管しておける場所はない。だから確保する分は少なめにして、必要に応じて購入すればいい、大事なことは無駄を出さないことだと決めた。

 日本は江戸の昔から、多くの人を養う国力があった。それを可能にしたのが、豊かな保存食品と無駄を戒めた文化である。

 その保存食を常温には置いておけない状態が進行し、生産者にも相応の影響を及ぼしている現実が見えた。暮らしを見据えて、できることを探し、新しい工夫につなげたいと思う。
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