「あの雪の日、彼が一人で来てくれたから、つながったんです」。みどり市大間々町の市民団体・郷土を美しくする会が1997年7月から毎週続けている大間々駅前の公衆トイレ掃除が9日、1000回に達した。足かけ20年、一度も休まずに続いた歩みの中で、会長の松崎靖さんには一つの風景が深く刻まれている▼掃除を始めて半年後の98年1月9日。この日は朝から大雪で、さすがにきょうは誰も来ないだろうと、松崎さんは家にいた。そこへ、バケツを持って駅から帰ってくる鏡裕史さんが現れた。手が凍るような氷点下のトイレを、たった一人で磨いた鏡さん。「あの姿は、本当に後光が差しているように見えた」▼薄い紙を1枚ずつ重ねて1000枚になると、厚みが出ると同時に、崩れやすくもなる。そこに「初心」という重しを乗せると、その厚みは土台となり、新たな積み重ねへの根となる―。節目の日の掃除に、兵庫県たつの市から参加した“同志”の木南一志さんはそんな言葉を寄せた▼トイレ掃除自体は凡事でも、それを続けることは、誰にでもできることではない。「1000回の節目で学んだことは、初心です」。松崎さんはこれからも、仲間たちとともに郷土を磨き続ける。(成)
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