久保貞次郎氏に一度だけ、お会いしたことがある。もう30年前、オノサト・トシノブが桐生の自宅で死去し無宗教の告別式が行われた。バッハが流れるなか参列者は白菊を手向け、久保氏が弔辞を読んだ。その文面をお借りして翌日の本紙に掲載した▼どなたかの仲介で、前に進み出たのだと思う。久保氏は当時、町田市立国際版画美術館長。初めて会ったオノサトは着古したレインコートに金属の水道ホースを巻いた姿。ヒッピーこそ現代の哲学者とし、その独創的な精神の輝きで現実を肯定、新しい絵画に定着させた。短くもすばらしい評伝だった▼そんなことを思い出したのは、長重之氏の話を聞いたからだ。足利高校の学園祭のため真岡の久保邸へ。ピカソ、北川民次、池田満寿夫らを見て、マチスの版画を借りた。それが大きすぎて鉄道で運ぶのに難儀した話も面白かった▼久保氏が持ち帰った多数の西洋の児童画に、自我の主張や対象への愛を見取ったのがオノサトや瑛九。そこから創造美育運動が主張する。子どもの絵の教育は、画家をつくるためでなく人間をつくるためのものだと▼上手くではなく、楽しく自由に思うままに。美術は心を開放して自分を見つめる時間となるはずだ。(流)
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人間をつくる
大間々が初の不参加、夏の高校野球群馬大会
第98回全国高校野球選手権群馬大会があす9日、開幕する。県内67校65チームが出場する中、大間々は部員不足のため初の不参加となり、桐生勢は7校が甲子園をめざす。
大間々は1961年の創部以来出場を続けてきたが、現在の部員は1、2年生の3人のみ。“最後の夏”となる3年生がいないことや、助っ人集めも厳しい状況から、やむなく不参加となった。
昨夏は正部員5人と助っ人8人の13人ながら、西邑楽との初戦で延長十四回の死闘を制し4年ぶりの公式戦勝利を飾った。3回戦で敗退後、3年生4人が引退。部員が当時1年の岡田哲昇選手だけとなり、昨秋、今春と大会不参加を余儀なくされた。
4月に1年生の小林大輔、根岸由樹両選手が入部。原田凛さん、平沼楓さんの2年生女子マネジャーも参加し、5人で基礎練習に励む日々だ。岡田選手は「来年に向けて準備しているつもり」と希望を捨てない。諏訪正浩監督も「来春には新入部員を集め、春季大会から復帰したい」と捲土(けんど)重来を期す。
桐生勢7校の仲間たちへ、岡田選手は「自分たちも試合ができるようになったら強いチームと戦いたい。だから桐生地区の学校も大会で勝ち上がって、強くなってほしい」とエールを送る。
今大会は大間々と板倉の2校が不参加で、下仁田・万場・長野原3校が3年連続の連合チームで出場する。
開会式は9日午前8時5分から敷島球場(前橋市)で行われる。選手宣誓は西邑楽の栗原佳孝主将。桐生第一3年の松沼敦也部員が入場行進を先導する。
式典後の同球場第2試合(正午から)で桐一が富岡、同日の高崎城南球場第2試合(午後1時半から)で桐生が太田と初戦に臨む。
10日の城南球場第3試合(午後2時から)で桐生南が太田工と対戦。11日の桐生球場第1試合(午前9時から)で桐生市商が高崎東、続く第2試合(同11時半から)で桐生工が四ツ葉、城南球場第3試合(午後2時から)で桐生西が前橋西と戦う。12日敷島球場第1試合(午前9時から)で樹徳が前橋商と激突する。
入場料は大人600円、中・高生100円、小学生以下無料。
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選挙戦最終盤、桐生地区でも総仕上げ
参院選は10日の投票日まであと2日に迫った。群馬選挙区(改選定数1)は、6選をめざす自民党現職・中曽根弘文候補(70)が優位に戦いを進め、野党統一候補の民進党新人・堀越啓仁候補(36)らが追う展開。6月22日にスタートした18日間の選挙戦も最終盤に入り、両陣営とも前橋、高崎両市で決起集会を開くなど総仕上げの段階。桐生、みどり市でも集会や街頭演説を通じ、組織の引き締めや支持拡大にラストスパートをかける。
時事通信社の世論調査や各紙の報道によると、全国的に自民優勢の中、群馬選挙区は中曽根候補が全域で支持を固め、堀越候補が追う展開。政治団体・幸福実現党新人の安永陽候補(68)は独自の戦いをしている。
堀越候補は7日、桐生、みどり両市の主要交差点や大型店前で街頭演説に立った。広沢町一丁目では「私たちの年金を株に投資し、数兆円の運用損を出している。社会保障は削られ、実質賃金は下がり非正規雇用は増える、こんな状況で安心して暮らせるか」と安倍政権を批判。「日本の金融資産1740兆円のうち500兆円は1%の富裕層が持っている。富裕税導入と法人税見直しで、社会保障や子育ての財源はできる」と訴えた。
安保法制や憲法改正にも触れ「バングラデシュで日本人7人がテロの犠牲になった。海外で武力行使すれば本土でもテロの可能性が高まる」と主張。安倍政権下での改憲阻止、安保関連法廃止を力説した。
安永候補は公示後に2日間、桐生地区で街頭に立った。相生町一丁目では、国防強化や消費税5%への引き下げによる景気対策、マイナンバー制度廃止を訴え、「与党でもなく野党でもない新しい選択を」と呼びかけた。
中曽根候補は終盤、県内約20カ所で地区別決起集会を開催。8日はみどり市大間々町13区公民館と桐生プリオパレスで集会を開き、支持固めを図った。
前橋市で7日に開いた大集会では「アベノミクスで景気は良くなっているが十分でない。中国の景気減速や英国のEU(欧州連合)離脱で日本も横波を受けるか心配されている。こういうときこそ政治を安定させ、経済対策を前進させることが課題だ」と訴えた。
周辺国の動向にも触れ「安全保障環境が非常に厳しい。中国とは一触即発と言っても過言ではない。難民流出やテロなど国際的にも変動期。盤石な政治を行い、変化に的確に対応しなければ。6期目も群馬の代表としてしっかり仕事をしたい」と支援を求めた。
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豊かだな
雑草という草はない。それはそうだと思う。だけど、雑草という状態はあるなあと、生い茂る草むらを見ていてしみじみ思う▼スミレの仲間、アザミ、ネコジャラシ、オオバコ、ドクダミ、タンポポ、ツユクサ…。一つ一つ見ればそれなりに知っている草もあるのだが、その生え方ときたらまあ、入り組んで入り組んで。少しでも地面からの栄養分を、少しでも日の光をと、土、砂、砂利とどこであれ、陣取りゲームのようなせめぎ合い。結果、草たちの乱雑な状態▼考えてみれば人間は、肌や目の色、背丈や容姿などに違いはあれど、「ホモサピエンスサピエンス」という一つの種。草たちも一つ一つをじっくり見れば、葉っぱや花の色、形、背丈など、違いはたくさんあるのだろう。そんな草たちが、こんな空き地をちょっと見るだけで、何十種も見つかる。いやはや多彩だな、豊かだな▼さらにいえば、砂や砂利だって、花こう岩やら玄武岩やら堆積岩やら石灰岩やら、質も形もいろいろだ。まあ多彩だな、豊かだな▼これだけ多彩で豊かだと、その全てを追えやしない。世界はほんとにいろいろなものでできているのだな▼そんなことをぼーっと考えていたら、たくさん、カに刺された。ああ、虫もそうだな。(篤)
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開会式だけで開幕、雨で試合は順延 高校野球群馬大会
第98回全国高校野球選手権群馬大会は9日、67校65チームが参加し、前橋市の敷島球場で開会式を行った。しかし、早朝から降りしきる雨のため、開幕日に予定されていた4試合は中止となり、あすに順延に。それでも観客席には大勢の高校野球ファンがつめかけ、選手は初戦に向け、静かに闘志を燃やしていた。
開幕日の試合が中止となるのは珍しく、県高野連によると「45年くらい前に中止となって以来」。時折激しく降る雨の中で行われた開会式でも入場行進は行わず、先導役の桐生第一高校の松沼敦也部員(3年)の合図で、外野からダイヤモンドに向けて一斉に前進し、整列した。
イレギュラーな中で大役を務めた松沼くんは「緊張したけれど、開会式の雰囲気をグラウンドで味わえてうれしい。あすから全力でチームを応援していきたい」と話した。
式典で群馬高野連の吉井均会長は「昨年は高校野球誕生100年の節目の年。今年は2年後に控える100回大会に向けた、未来に続く懸け橋となる重要な大会」などとあいさつ。また、昭和イーグルスの竹之内一宝主将(昭和村立南小6年)からの応援メッセージを受け、西邑楽の栗原佳孝主将は選手宣誓で「思いを白球に込め、新たな100年へと全力で走りだす夏にすることを誓います」などと力強く語った。
試合中止を受け、1、2回戦は1日ずつ順延。桐生勢はあす10日、敷島球場第2試合で桐生第一が富岡と、高崎城南球場第2試合で桐生が太田とそれぞれ対戦する。試合は午前11時半開始予定。
桐一の高田修平主将は「朝、みんなで切り替えていこうと声をかけた。しっかり調整して試合に臨みたい」と、桐高の高島喜美夫監督は「あすの方がいいコンディションでできる。とにかく全力で戦う」と話した。
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3候補に審判、参院選群馬選挙区
第24回参院選はあす10日に投票が行われ、即日開票される。群馬選挙区(改選定数1)は民進党新人の堀越啓仁(36)、政治団体・幸福実現党新人の安永陽(68)、自民党現職の中曽根弘文(70)の3候補が有権者の審判を仰ぐ。安倍政権の経済政策「アベノミクス」の評価や憲法改正の是非が争点で、自民など改憲勢力が発議に必要な3分の2(162)の議席に達するか、野党がこれを阻止するかも注目される。
今回から選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられ、11日までに満18歳の誕生日を迎える人が新有権者となる。県内では全有権者の2・4%にあたる3万9791人(6月21日現在)が加わる。
改選121議席に対し選挙区225人、比例代表164人の計389人が立候補した今回の参院選。自公両党とおおさか維新の会、日本のこころを大切にする党の改憲派4党が78議席を得れば、非改選と合わせ3分の2に届く。改憲派の無所属と諸派の非改選4人も含むと3分の2ラインは74議席に下がる。
堀越候補は、年金の株運用による巨額損失や実質賃金低下などを挙げて安倍政権を批判し、福祉の充実を主張。野党共闘で「憲法改悪阻止」も訴えた。安永候補は国防強化や消費税5%への引き下げなどを唱えた。
中曽根候補は、英国のEU(欧州連合)離脱などによる経済の悪影響を懸念し、安全保障環境の変化も踏まえ「政治の安定」が重要と強調。6選をめざす。
今回から桐生市黒保根町の涌丸、楡沢の2集会所の投票所がそれぞれ上田沢、下田沢の各集会所に統合され、同町の投票所は4カ所に、市全体では61カ所になる。
桐生、みどり両市での投票は午前7時から午後7時まで。ただし桐生市梅田町五丁目の馬立集会所と、みどり市大間々町のふるさと往来センター、福岡中央公民館、大間々17区集会所と東町内4カ所は午後6時まで。
開票は午後8時から始まり、選挙区が午後10時半、比例代表が翌11日午前1時半に終了予定。県選管は午後8時半から30分ごとの開票速報を順次流す。テレビ各社は午後8時前から特番を放送し、当確速報を競う。
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最も弱い人たち
生まれたばかりの未熟児が、重症肺炎で生死をさまよう。窒息症状だ。弱る長女の胸骨に親指を当て、必死で人工呼吸を続ける両親。呼吸をしてくれ。指に思わず力が入る▼「胸骨の皮がペロリと剥がれた。真っ赤な真皮が現れた。私の心臓を鋭い刃物で抉るような衝撃が走った。『さぞ痛かったろう。しかし、どうか助かってくれ』。私も家内も必死であった」▼一命をとりとめるも、脳性まひとの診断。昭和30年当時、重症心身障害児の医療など存在せず、医学のどの分野でも無視された。約20年後、両親は桐生市境に近い大間々町に、重症児者施設「希望の家」を設立する▼両親とは、社会福祉法人希望の家名誉理事長の矢野亨さんご夫婦。冒頭からの逸話は、12年前に発刊した「矢野亨随筆・論説集」からの引用だ。矢野亨さんの訃報を聞いて同著を読み直した。巻頭随筆を締めくくる言葉に決意がにじむ。「『希望の家』の精神の原点こそ、長女を助けようとして胸骨の皮が剥けた時、私の心に走ったあの悲しい衝撃にほかならない」▼社会的・医療的に最も弱い立場の人が、安心して暮らせる社会であってほしい―。選挙結果を見つめながら、故人の決意に思いをはせた。(針)
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「投票で変わるかも」、18歳、初の1票を投じる
選挙権年齢を「18歳以上」に引き下げた公職選挙法の下で初めて行われた今回の参院選。桐生、みどり両市の投票所でも10日、新たに有権者となった若者がさまざまな思いを込めて1票を投じた。
桐生北小で初の投票を行った小島優那さん(18)=本町一丁目、群馬大医学部1年=は、「自分の1票なんて大したことないと思っていたけど、若い世代が投票しないと高齢者を向いた政治になると聞き、投票は大切だと思った。1票で変わる可能性があると期待したい」と、両手で投票用紙を箱に入れた。
大学で憲法の講義を受けていることもあり、「憲法改正や集団的自衛権について自分なりに考えて投票先を選んだ」と小島さん。「奨学金制度や財政問題、税金の使い方にも関心がある」と、有権者になったのを機に政治を見る目が変わった。
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中曽根氏圧勝で6選、野党共闘も風吹かず
第24回参院選は10日投票が行われ、即日開票された。群馬選挙区(改選定数1)は自民党現職で元外相の中曽根弘文氏(70)が52万7371票を獲得し、野党統一候補として戦った民進党新人の堀越啓仁氏(36)らを圧倒して6選を果たした。投票率は50・51%にとどまり、2013年の前回選をさらに1・2ポイント下回る過去最低を更新した。
安倍政権の経済政策「アベノミクス」の評価や、自民など改憲勢力が発議に必要な3分の2議席を確保するかなどが争点となった今回の参院選。ただ有権者の関心は高まらず、時事通信によると全国の投票率は54・70%と、前回選の52・61%は2・09ポイント上回ったものの、過去4番目の低さだった。
群馬選挙区では、抜群の知名度を誇る中曽根氏が有効得票数の65・9%を占めて圧勝した。だが当初からの楽勝ムードや投票率の低さも響き、陣営が目標にした60万票の大台には届かなかったばかりか、6年前の選挙で中曽根氏が獲得した55万票にも及ばず、分厚い支持組織が有権者の関心を高めるには至らなかった。
堀越氏は、野党共闘を呼びかける市民団体を立ち上げた経緯から、共産、社民両党の推薦も受け、県内初の野党統一候補として自身初の選挙に臨んだ。音楽と演説を交えた「選挙フェス」など新しいスタイルを導入し、アベノミクス批判や改憲阻止を訴えたが、出馬表明が4月と出遅れ、知名度が高まらなかった上に、運動も上滑り感が否めず、票は伸びなかった。
安永氏は3年前に続き出馬。国防強化や消費税5%への引き下げなどを唱え、前回より票を上積みした。
当日有権者数は県全体が165万35人、桐生市は9万9558人、みどり市は4万2647人だった。投票率は桐生市が前回比0・74ポイント減の50・46%、みどり市が同1・9ポイント減の47・0%で、過去最低だった前回をさらに下回った。
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永六輔さんのこと
永六輔さんが亡くなった。1933年4月、東京の生まれ、享年83だった。
テレビのバラエティー番組「夢で逢いましょう」を知らない世代にとって、永さんとの接点はもっぱらラジオの番組だった。芸能への造詣が深く、自由自在で軽妙洒脱な話芸の中に、「戦争はよくない」という明確な視点を持ち、世の中で起こるさまざまな事象にもの申してゆく。そんな姿勢は、ラジオ番組の最後まで一貫していた。
「戦争は嫌いでございます。親孝行ができません。なにしろ散らかしますから」。新内節の名手である岡本文弥さんの言葉を、ことあるごとに紹介していたのを思い出す。「散らかす」という言葉のざらついた手ざわりが、戦争を知らない世代にその本質を告げているようで、強い印象を受けた。戦争を経験した先人たちのこうした言葉の数々を、自身の経験に引き合わせながら紹介するスタイルが、永さんの思い出である。
33年生まれといえば、12歳で終戦を迎え、大転換する価値観と目覚ましい戦後復興の中で大人になった世代である。テレビという新しいメディアが登場し、視覚化された芸能をお茶の間に届けた。その仕掛け人役に、遊びごころたっぷりに取り組んだ人でもあった。
一方で、大きな権力には常に疑いのまなざしを向けていた。あの戦争を忘れるため戦後を終わらせたい人たちがいる中で、そうやすやすとは次なる戦前にさせまいとする意志があるようで、そこにこの世代の時代人たちの芯を感じたりもしていた。
東日本大震災の後、多くの人たちが祈るような気持ちで、永さんの作詞した「上を向いて歩こう」を歌った。なぜ泣いているのか理由はわからずとも、それに耐えようとしている人の気持ちはわかる。ひとりぽっちに寄り添う歌なのだと、漠然と聞いていたのだが、最近はそれだけでなく、最後は誰に頼るでもなく、一人で耐えるしかないのだと、そんな力強いメッセージが聞こえてくる。
戦争から70年がすぎ、戦争を経験した世代が徐々に他界してゆく。先日の参議院選挙では、初めて18歳からの選挙参加が認められる一方で、自民党が議席を伸ばし、憲法改正の議論が始まりそうな気配である。
相対化の時代に、「戦争はいけません」と理屈なしに言い切れるよう、気概を持ちたい。
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プロの仕事
以前、本欄で羽化しないアゲハチョウさなぎの話をした。「処遇に困っている」と締めくくったあれはいまだに見事な緑色で、まるで生きているよう▼どうにもあきらめがつかなくて昆虫の森の専門員に尋ねると「室内飼育で日に当たる時間が短いと越冬さなぎになる可能性がある」とのこと。1カ月ほど様子をみてから冷蔵庫に入れて、疑似的に冬を経験させ再び室温に戻せば羽化する可能性があるそうだ▼言われてみれば確かにその通り。だけど、「さなぎで越冬する」という知識を持っていても、なかなか実際の現象と結び付けられないものだ。そこがプロフェッショナルとの大きな違い▼彼らは自分たちの経験を生かし、目的達成へのさまざまな可能性を模索し、膨大な知識と数々の技術を駆使して、最良を選び取る。大げさなようだけれど、どんな職業でもプロフェッショナルとはそういうこと。だからその仕事ぶりが好きだし、あこがれてしまうのだ▼ときに先の日曜日。選ばれた人たちの中に「プロフェッショナル」はどれくらいいるんだろうか。政治に限らず、何らかの知識・技術・経験を有し、自分の持ち場で力を発揮できる人はどれくらいだろう。そんなことをふと考えてしまった。(並)
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踊ろう「桐生音頭」、来月6日の錦町大通りで
桐生八木節まつり中日の8月6日夜、桐生市錦町一丁目の大通りに今年も桐生音頭の踊りの輪が広がる。市民向けの練習会も行われており、次回は7月18日。主催の錦町商店街振興組合では「今からでも間に合うので一緒に踊りませんか」と、参加を呼び掛けている。
懐かしい桐生音頭を桐生の目抜き通りで踊ろうと、一昨年始まった取り組み。
毎年、本番前の7月中、東毛連合舞踊の会の静香寿之衣さんを講師に招き、錦町一丁目にある雷電神社境内の雷電会館ホールで練習会を開いている。
今年も毎週月曜、午後7時から練習を開始。11日夜には地元をはじめ市内外から約20人の踊り手が集まり、うちわ片手に踊りの基本動作を練習した。
「のびのび踊ることが大切」と静香さん。「錦町から本町一丁目に向けて、明かりがついてゆくようにうちわを回して」など、ふりつけの意味をひもときながら動きを繰り返し、体で覚えさせた。
練習後半には「トントと鳴るのは機の音ソレ」の歌声も入り、踊り手に笑顔も。静香さんは「一度練習すれば踊りの輪に入れます。興味のある人はぜひ足を運んで」と呼び掛けている。
練習は18、25日の午後7時から。参加無料。希望者は直接会場へ。
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動かせる涼空間づくり、実証実験スタート
猛暑の開催が懸念される2020年東京オリンピック・パラリンピックで選手や観衆を熱中症から守ろうと、動かせる樹木システムで涼空間をつくり出す実証実験が、東京都江東区の東京ビッグサイトでスタートした。東京都農林総合研究センター(農総研)と群馬大学大学院理工学府が協力し、14年から継続している取り組みで、今夏の実験では、車いす利用者など障害を持つ人にも使いやすい新型ベンチに焦点を当て、9月いっぱいまで基礎データを採取する。これまでの実験で、熱中症の危険度を下げる効果については数値的な裏付けが得られたほか、樹木システムの基本設計はほぼ完成している。
農総研と群馬大学大学院理工学府の天谷賢児教授らのグループでは、コンテナを使った樹木とミスト(霧)の発生装置、それにベンチを組み合わせた“動かせる涼空間”の開発に取り組んでいる。
樹木による木陰とミストの気化熱で、体感温度はどれだけ下がるのか。天谷教授らは昨年までにデータを収集。何もないベンチに比べ、木陰で7・1度、木陰+ミストで11・1度の低減効果が確認されている。また、熱中症危険度の目安とされる「暑さ指数」も下がり、何もない空間に比べ、木陰+ミストで危険度は6分の1に低減することも分かった。
今回の実験では、車いすの利用者やベビーカーを押す保護者らが利用しやすいユニバーサルデザインのベンチを製作。ビッグサイト駐車場の一画に6基のシステムを設置し、7月1日から9月末まで数値を採取、障害者や乳児の快適性を確認する。
また、ビッグサイト2階のエントランスには、これまでに製作したモデルタイプのシステム40基を設置。実際に利用してもらうことで耐久性などを確認、アンケートで課題を探る。
東京都多摩産の木材と東京産の植木を活用しているが、ベンチの設計・製造には群馬県森林組合連合会が協力。みどり市にあるわたらせ森林組合も製造にかかわった。また、コンテナ上部の布には朝倉染布製の超撥水(はっすい)布を利用するなど、地元事業者も大きく貢献している。
天谷教授は「さまざまな事業者に協力をいただいている。実験の成果が生かされ、快適な五輪の開催に役立てば」と話している。
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「障害突破」も全国出場、桐生市消防本部
消防職員の救助技術を競う第45回消防救助技術関東地区指導会が13日、神奈川県厚木市であり、桐生市消防本部は陸上の部「障害突破」で入賞し、8月24日に愛媛県松山市で開かれる全国消防救助技術大会への出場権を得た。同種目の全国出場は12年ぶり3回目。
関東地区指導会は神奈川県総合防災センター・同県消防学校で開催。同本部は陸上の部「障害突破」と水上の部「基本泳法」に出場し、うち障害突破は出場27チーム中、全国出場権が与えられる上位7チームに入った。
障害突破は、5人一組で、スタート地点からゴール地点に至る経路に設けた5カ所の障害を、互いに協力して救助者全員が突破するまでの安全確実性と所要時間を競う種目。桐生は雨の降る悪条件にもかかわらず、満点かつ好タイムで入賞を果たした。
桑子信之消防長は「全国大会でも入賞し、桐生の名をとどろかせてほしい」と期待した。
なお、全国大会には県指導会で優勝した陸上の部「ほふく救出」も出場する。同種目の全国出場は26年ぶり。
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照準ズバリ日本一、桐商コンピュータ部、24日に全国大会
桐生市立商業高校(閑野泉校長)のコンピュータ部(部員29人、渡邉拓真部長、諸星尚紀顧問)が、4年連続で全国大会に出場する。昨年は準優勝という過去最高の成績を収めており、常に「先輩を超えたい」同部にとって、目標は当然「日本一」。24日に千葉・明海大学で80分の競技に挑む。
県大会4連覇を果たし、第28回全国高等学校情報処理競技大会への出場権を獲得した桐商コンピュータ部。県内のライバルは前商だったが、今年は伊商が僅差で2位につけた。
渡邉部長は「過去問を解いたり、わからないときは先生や隣の人に聞いたり、全員で取り組んできて優勝できた」とチームワークの良さを誇る。「勉強がメーンの部活ですが、一人でなく、仲間とコミュニケーションをとって学んでいけるのがいい」と。
全国大会へは4人が出場する。桐商のメンバーは、県大会個人3位の渡邉部長と2位の竹澤颯人さん(3年)、やはり3位の澤崎舜さん(2年)、そしてもう一人はこれからテストをして決めることになっている。競技は筆記試験で、第1部が関連用語とデータベース、第2部が表計算とアルゴリズムで各40分、計80分だ。
4年連続の全国大会で21位から5位、2位と上がってきた桐商。今年の目標は1位しかない。渡邉部長は「アルゴリズムが苦手なので、重点的に勉強したい」とし、竹澤さんは「計算ミスなどちょっとしたミスをなくし、勉強したことの理解を深めて本番に臨みたい」。澤崎さんは「わからないところがないようにしていきたい」と抱負を語った。
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共感の思いが次代を開く
桐生市が初めて機銃掃射を受けたのは1945年7月18日のことだが、機影はそれ以前から頻繁に桐生上空へ現れていた。
「太田を襲撃した敵機が桐生方面に向かってくるのは帰還の旋回のためで、夜目にもよくわかり、屋根にのぼると、敵機は夜空を魚が泳ぐように進んできます」。テキスタイルプランナーの新井淳一さんは昨年本紙で連載した「敗戦のあとさき」にこう書いた。屋根にのぼったのは、同年3月の東京大空襲を体験した小父に「防空壕には入るな」「B29なら屋根にのぼれ」と厳命されていたからである。
新井さんは同年4月に桐中2年の新学期を迎えた。上級生は軍需産業に駆りだされ、当時の2年生は学業に専念できる最高学年だった。新井さんはそこから敗戦まで、沖縄戦の伝説となった尊敬する先輩の死や、終戦直後の混乱の様子を貴重な体験談で綴ってくれたが、その番外編とも位置づけられそうな思い出話が先の桐高同窓会会報「山紫第24号」に掲載されていた。
表題は「敗戦のもたらした旧制と新制のはざまにあって」。
そこには、13歳から20歳までが学生として入り交じる状態にあって、軍国主義教育の後ろ盾を失い、民主主義を説得する権威も持ち合わせぬまま、みんなが明日を探り合おうとする学園生活の激変が描かれていた。
「反動教員追放」を叫んで多くの教師からひんしゅくを買った学生が、栄養失調になった先生のために全学年に呼びかけて食料を集め、その食料が統制違反に問われ、警察官の取り締まりに激しく抗議したこと。皇国史観の教師が「教師も生徒も共にGHQの民主主義を学ぶことで日本の再建を果たそう」といって英霊室を自らの涙で拭き清め撤去した話など。それはさまざまな立場の人が思いをぶつけ合い、情においては連帯した不思議な時間であったようだ。
人それぞれに立場は違う。けれども、そうした立場の違いがどんな歴史的背景を持っているかを理解し、共感の思いが抱けなければ何ごとも接点は見いだせず、次代は開けない。新井さんが描いたのは、居合わせた若者や大人が、それと必死に向き合っていこうとする姿だった。
会報には現代の若者の活躍も紹介されている。そこにつながれた敗戦の夏の体験談。先々の学校の姿がどのように変化していこうとも、伝統を語り継ぐ機会は大事にしたいものである。
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熱中症に注意
暑い日が続いているが、夏はさまざまなスポーツが盛んだ。小学生以下の子どもから80歳以上の人まで、屋外で体を動かす人たちは夏バテ知らず。熱中症が心配だが、各種の競技会では主催者が必ず注意喚起をしているし、競技者もこまめに水分をとっている。最近は塩分入りのあめなどもあり、持ち歩いている人も多い。運動をする人は体をとても大切にしている。食事や睡眠をしっかりとって、いかに暑くても背筋をぴんと伸ばしている▼体に無頓着なのはむしろインドア生活が長かった記者の方だった。昨夏、初めて熱中症らしき症状に見舞われた。その日は焼けつくような暑い日だったが、うっかり水分を持ち忘れて朝からずっと外にいた。食事も面倒だったので、昼食をとらずに成り行きのまま炎天下で過ごしてしまった。座った姿勢から立ち上がった途端、サーッと一瞬だけ目の前が真っ暗になった。一体何だろうと思ったが、特に気にしなかった。ゆっくりとした動作ながら立ったり座ったりを繰り返しているうちに、目が回って気が遠くなりかけた。慌てて自動販売機でスポーツドリンクを買って飲んだら気分が良くなった▼まさか自分がと思っている人ほど、熱中症にご注意を。(里)
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いいもの入ってる“宝の缶詰”、「真夏の雪遊び」で新企画
桐生市末広町の毎日パーキングで23日に行う「真夏の雪遊び」に向け、主催する末広町商店街振興組合(今川守理事長)では、商店賞や図書券などの入った宝箱ならぬ「宝の缶詰」の仕込みに取り掛かった。
人工降雪機で真夏に雪を降らせ、暑気を払おうというイベント。4度目の開催となる今回は、恒例の「雪遊び」「雪上スイカ割り」に加え、新たに「雪の中の宝探し」と「午後2時の気温当てクイズ」を行う。
このうち宝探しは、雪の中に埋まった宝の缶詰を、子どもたちに探し出してもらうゲーム。缶詰には各商店賞の引き換え券や図書券、菓子に駐車券などが入っており、100個用意する缶詰に外れはない。
8日夜、役員らは完成したばかりのラベルを缶に貼り、商店賞の券などを入れた宝の缶詰の一部を製作。週明けから本格的な仕込みを開始する。
また、午後2時の気温当てクイズは文字通り、当日午後2時時点の気温を予想してもらうゲーム。参加者は予想した気温(小数点以下1位まで)と名前を応募用紙に記し、正午までに応募する。
午後2時から会場で、気温当てクイズの答えを発表。最も近い上位10人にスイカ1玉が贈られる。また、クイズが終わり次第、宝探しが始まる。
なお、イベントは午前10時スタート。スイカ割りは午前11時と午後1時から。今回はスイカを持ち帰れる特典はなく、割られたスイカは来場者に無料で振る舞われる。
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職員らを懲戒処分へ、投票用紙交付ミスで
みどり市役所大間々庁舎の参院選期日前投票所で1日に発生した投票用紙の交付ミスで、同市は近く、行政処分審査委員会(委員長・中澤哲夫副市長)を開き、ミスをした市職員らの処分を検討する。
ミスは同日午前8時半から午後6時40分ごろまでに受け付けた期日前投票で、選挙区と比例代表の投票用紙を取り違えて有権者計59人に交付したもの。
職員が同日朝に投票用紙を準備する際、本来は選挙区用の黄色い投票用紙をセットするべき機械に比例用の白い投票用紙をセットし、そのまま交付。この日60番目に訪れた有権者がミスに気付き、その前にいた59番目の有権者の比例用の投票用紙から正常に交付された。このミスで、最大59人の選挙区選挙と58人の比例代表選挙の投票が無効になった可能性が高い。
市選挙管理委員会を所管する市総務部によると、処分対象は当日の同投票所の投票管理者だった職員と、投票用紙を誤交付した職員、それに管理責任のある選管書記長(市総務課長)の少なくとも3人といい、立場によって減給や戒告などの懲戒処分が検討されるという。
ミス発覚後、選管書記長の市総務課長は体調不良を理由に休職している。
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梅田湖名物、花火大会継承へ、来年4月の開催目指す
2006年に始まり、昨年、第10回の節目で終了した師走の恒例「梅田湖冬花火大会」を引き継ごうと、桐生市倫理法人会の会長でミタケプランニング代表取締役の長竹伯晶さんを中心とした有志約60人が14日、桐生商工会議所会館に集まり、新たな「桐生梅田湖花火大会」の開催に向け、第一歩を踏み出した。
梅田湖冬花火は、地元の梅田カラオケ愛好会の有志が、湖畔のうどん店「雪の屋」で開くカラオケ大会に合わせて始めたイベント。澄んだ空気の中、湖面に映える花火の美しさと、音の響きのよさには定評があり、年とともにファンが拡大、花火師からの評価も高かった。
ただ、実行委員会のメンバーの高齢化などもあり、昨年12月23日の第10回を節目に終了を宣言していた。
今回の呼び掛け人で、桐生梅田湖花火大会実行委員長でもある長竹さんは、「せっかく定着した梅田の名物がこのまま消えてしまうのは惜しいと思った。花火大会の開催を通じて故郷を盛り上げ、若者たちの新しい輪が生まれれば」と、呼び掛けに賛同した有志に向けて動機を語った。
また、梅田湖冬花火大会で実行委員長を務めてきた小島正吉さんも出席し、花火大会の運営ノウハウなどを紹介。参加者からは「若い人の参加はもちろん大切だが、小島さんのような経験者の知恵が力になるはず」といった声も聞かれた。
12人で構成される実行委員会の役員によると、来年4月半ばの開催に向け、今後、200人のボランティア、200万円(1口1万円)の協賛金を目標に活動を展開していく。湖畔での飲食や物品販売ブースなども視野に入れている。
第2回実行委員会も開く予定で、「興味のある人はぜひ参加を」と、長竹さんは呼び掛けている。
問い合わせは長竹さん(電090・3499・0092)まで。
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