Quantcast
Channel: ウェブ桐生タイムス
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2430

群大大学院・松本健作助教ら、未開の領域に挑む

$
0
0

 群馬大学大学院理工学府松本健作助教らのグループが、地下水に生息する水生生物の生態や生息環境の調査に取り組んでいる。学術的には未開の領域で、調査手法も確立されていない。グループが桐生川の堤防沿いに設けた観測孔では、1回の観測で40体ものメクラミズムシモドキが確認された。「こうした事例さえ前例がない」と松本助教は指摘する。グループでは今後、観測孔に防水内視鏡を挿入して直接観察する今回の手法を活用し、水生生物の生態や、生息実態と水質・地盤特性との関係などを調べる計画だ。

 流域環境学が専門の松本助教らのグループは2014年5月、大学構内に30メートル間隔で2本(深さ13メートルと15メートル)の穴を掘り、直径5センチの観測管を埋め、内視鏡カメラで地下水内をのぞいた。地下水流を観測するためだった。

 パソコン画面に映し出されたのは、水中を動く色素のない地下水生甲殻類たち。体長はいずれも数ミリから1センチ程度で、多種類が交じっていた。

 グループでは15年3月から16年1月にかけ、週1回のペースで観測を続ける一方、北九州市立自然史・歴史博物館学芸員の下村通誉さんに生物の同定を依頼。その結果、最も多く観察された水生生物は、1956年に新種認定された日本固有種のメクラミズムシモドキと判明した。

 従来の観測場所は井戸や湧水、鍾乳洞など、地下水が地表に現れた環境に限られており、地中の地下水中を観測した今回のようなケースはきわめてまれ。「1度に最高40体もの個体が確認できた今回の事例は、1~3匹という従来の観測結果に比べれば異例だが、これが特異かどうかは、観測地点を増やさないと分からない」と松本助教。

 メクラミズムシモドキの生態はほぼ不明で、研究グループでは複数の個体を大学内の恒温恒湿室で飼育し、脱皮の様子など生態観察を続けている。「水を替えず、餌を与えることもなく、300日以上生存した個体もいる」という。

 2カ所の観測孔で比較すると、水生生物の個体数は20倍以上も違う。「実験から、生息に適した水質も見えてきた」とも。今後は地質など、水以外の環境因子との関係も調べる予定だ。

 「地下水生生物の生息状況は、川の流れの変遷と関係しているかもしれない。生態や生息実態を調べることで、目に見えない地下環境を知る手掛かりになれば」と松本助教。研究を推進するためにも、地下水生生物に関する情報提供を呼び掛けている。

 問い合わせは松本助教(電090・4418・0958)まで。
関連記事:


Viewing all articles
Browse latest Browse all 2430

Trending Articles