桐生が岡動物園のクモザル舎に付属する池の連続水質浄化装置「すーぱーぴーとる」が7年の開発期間をへて完成した。群馬工業高等専門学校名誉教授・NPO法人小島昭研究所理事長で、水質浄化に力を注ぐ小島昭さん(74)=桐生市本町四丁目=が、石井商事(高崎市)と共同で行ったもの。池の水を「すーぱーぴーとる」に循環させて水中の汚濁を除去する仕組みで、11月中旬から始動し、約2週間たった水は透明度を維持している。
2009年3月に完成したクモザル舎は樹上で暮らし水に入らないクモザルの習性から、ため池が設置されている。池にはアヒルやコイ、カメもおり、動物のえさの食べのこし、排せつ物などで水質汚濁が発生。同園では必要に応じて年に4、5回水を入れ替えてきたが、夏場は2週間で水が緑色に汚れるなど、飼育員の負担も大きかった。
小島さんは同年から炭素繊維を用いた浄化材を池に入れるなど、クモザル池の水質浄化に協力。一般的な排水処理で用いる薬品を使わず、飼育動物や自然環境に負荷をかけない浄化方法を模索してきた。
完成した連続水質浄化装置「すーぱーぴーとる」は、池の水をポンプでくみ上げ、三つの水槽(1)ろ過槽(2)黒鉛板・鉄板が入った鉄デバイス槽(3)ろ過槽―を循環して浄化し、処理後の水を池に戻す。特徴は(2)の水槽で、水中に溶けだした鉄によって微細な浮遊物を集めて除去する機能を持つ。
緑色に濁った水の透明度が向上し、水質の指標でもある水中の有機物、窒素、リンの除去効果が確認できたという。飼育環境向上につながる取り組みに同園は「ありがたい協力。期待しながら池の様子を見守りたい」と話した。
これまで水質浄化で功績を上げてきた小島さんだが、装置の開発は手探り。炭素繊維浄化材からの切り替え、水槽の壁の高さや循環の工夫など悩みも多かった。「化学物質を使わず、安心安全な材料で水質浄化が可能」と自信を持つ装置の完成に、「ほっとした。フィールドを提供してくれた動物園に感謝です」と笑顔を見せた。
1日当たりの処理能力は5・8立方メートルで、池の水(80立方メートル)が約2週間で循環する。今後は浄化機能の向上を図り、製品化を進めるとしており、「動物園で始まった取り組みを全国各地に広めていきたい」と話している。
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