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火の用心の大切さ

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 同じ話を幾つか聞いた。私たちがふだん耳にし、それなりに理解している「やごみ」ということばが、他県の出身者には通じなかったというのである。

 住宅が密集した場所のことをさし、「家込み」と漢字も何となく思い浮かぶのに、調べると確かに辞書に載ってない。「方言でしょうか」と聞かれた。

 方言かどうか、それに答える知識はない。ただ、それから意識していろいろ人に尋ねてみてわかったことが二つ。一つはふだん使うか使わないかはまちまちながら、地元の人はみんな意味を知っているということ。そして一つは、通じない人がいることについ最近気づいた人が何人かいた、という事実である。

 ではなぜ急に、通じない人がいることに気づき、このことばが話題になったのか。きっかけは昨年暮れの新潟県糸魚川市の大規模火災である。「家ごみだからたいへんだ」と、多くの市民がこう言って、突然の災難に巻き込まれた被災者を気遣ったからにほかならないだろう。

 火災は12月22日、144棟の住宅や店舗が焼け、16人がけがをした。延焼した範囲はおよそ4万平方メートルに及び、強風によって延焼した事情が通常の火災とは異なるとして被災者生活再建支援法の適用が決まったほか、日本赤十字社の義援金受付窓口も設けられ、すでに復興に向けて動き始めた。

 それにしても、強風下の密集地で起きた火災は、私たちの想像をはるかに超える速さで広がるものである。多くのメディアが延焼メカニズムの検証に取り組んでいたが、飛び火による拡大が予期せぬ事情の呼び水となり、地域が持つ消火能力をあっさり超えてしまったようだ。

 一方、原因はいつも古典的だ。そこが火事の怖さである。

 桐生市史別巻の中にある1740年以後の火災記録71件のうち、焼失が100戸を超えたのは1800年代に三つ。43年に下久方村と下菱村と小友村で160戸、64年に新町四丁目で350戸、75年に新町一丁目で117戸。いずれも風の日だ。

 大規模火災が年を追うごとにその数を減らすのは教訓を生かした防火対策の賜物である。

 しかし、どんなに気を配っても都市の構造にはきっと弱点が生まれ、災害は必ずそうした弱点をついてくるものである。

 人が暮らしていく限り、忘れてはならないのが火の用心。この季節、特に心したい。
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