聴覚障害者によるバスケットボール「デフバスケットボール」の日本代表選手に桐生第一高校3年の長田拓巳選手が選ばれた。3歳から背負う先天性難聴というハンディにもかかわらず、抜群の得点能力と当たり負けしないフィジカルの強さが評価された。2月5~11日の米国遠征を控える長田選手は「レベルの高い選手とゲームができる。わくわく感があります」と期待に胸ふくらませる。
長田選手は栃木県足利市出身。小学3年のとき兄大輝さんの影響で山前ミニバスに入団。足利西中を経て山辺中バスケ部で活躍。2年時にジュニアオールスター栃木代表選抜選手に選ばれた。
進学先の桐一では、先天性難聴とはいえ、補聴器を付けて普通に学園生活を送っており、バスケも他の生徒と同じ練習メニューをこなす中でレギュラーでスタメンの地位を勝ち取った。
昨年11月のウインターカップ県予選準決勝では出場二十数分で3ポイントシュートを含む27点をたたき出して勝利に貢献。「長田のおかげで決勝に行けたようなもの」と鳥海友見ヘッドコーチを言わしめたほど。
とはいえ、激しいプレーで他の選手と接触し「補聴器がはずれてしまうこともあった。すぐに拾って付けてプレーを続けた」(長田選手)という苦い経験も味わった。
長田選手とデフバスケとの出会いは2年生のとき。新人戦を観戦していた上武大の監督に声をかけられ、数カ月に1度の割合で兵庫県神戸市の強化合宿に加わるように。昨年12月に上武大伊勢崎キャンパスで開かれた合宿にも参加した。
日本代表チームは、上田頼飛氏をヘッドコーチに4人のスタッフ、選手9人が在籍。年齢幅は最年少の長田選手のほか、上は30代もいる。高校生、大学生、社会人などが在籍。聴覚障害の度合いもさまざまだという。
身長171センチの長田選手はバスケ選手として高い方ではないが、補って余りある鍛えた筋力を持つ。「フィジカルには自信がある」と豪語するほど。筋力を武器にどんな大きい選手にも当たり負けしない強さを持つ。
「海外でレベルの高い選手とゲームができる。わくわく感がある。経験をさらに積みたい」と抱負を語る長田選手。活躍が認められ、再び日本代表に選ばれれば、デフリンピックや世界選手権などの国際大会へ出場する可能性も高い。
海外遠征から帰国すると4月には上武大学ビジネス情報学部へ進学予定。高校生活を振り返り「蛭間(貞夫)先生(アシスタントコーチ)と鳥海先生(ヘッドコーチ)に指導してもらったことで、どんどん実力が付いた」と感謝する。
教え子の朗報に笑顔の鳥海コーチも「中学時代から筋力を鍛え続け、入部当初もベンチプレスで他の生徒の倍の重さをすでに上げていた。日本代表としてプライドを持って一生懸命やってほしい」と期待する。
大学進学後も通常のバスケとデフバスケの〝二足のわらじ〟をはくつもりの長田選手。「僕たちが入学して上武大は部員が100人ぐらいになるが、死に物狂いで練習を重ね、スタメン選手になりたい」と張り切る。
【メモ】▽デフバスケットボール=デフはDeaf(聴覚障害)のこと。チームメートの声、ドリブルの音、審判の笛がまったく聞こえない状態でプレーする。そのため、大会などでは審判は黄色い手袋を着用、審判の笛がなるとコート対角で旗を振って合図するなど配慮されている。特定非営利活動法人日本デフバスケットボール協会(通称JDBA)が主に運営。国内・国際大会もある。
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