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雛たちの宴

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 春高楼ではなく恒例の、花の宴。毎年真っ先に味わうのは目黒雅叙園百段階段の雛まつりで、絢爛豪華な七つの部屋に今春は九州各地の雛たちが集められた。ロビーには宮崎県綾町の風習という雛山。山の神への祈りを込めた造形を築いて雛たちが飾られていた▼筑豊の炭鉱王、伊藤伝右衛門邸の座敷雛は圧巻。博多山笠や京都祇園や青森ねぶた、各地の祭りに舞い踊り浮かれる熱狂の絵巻だ。かたや伝右衛門への絶縁状を公開して伊藤邸を去った柳原白蓮の有職雛も。出奔5年後に雛と再会した白蓮は頬ずりして喜んだという▼雛には厄払いの流し雛のような信仰系と、子どもの相手の愛玩系、そして飾って見る鑑賞系の3種類があるという。持てる人形を総動員して段飾りの下に並べ、内裏さまたちを御殿から出して身分国籍差別なく遊ばせていた幼きころは、愛玩と鑑賞の区別もなかったが▼どの系にしても、ひとがたである。人の身代わりとして情を宿す。代々受け継がれた人形ほど、さまざまな思いを注がれる。澄まし顔の奥にほのみえる複雑さがたまらない。全国各地で町なか雛まつりが盛んになった。期間限定、人生も有限。いつかゆったり、巡り歩きたいものだ。(流)
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