春はどこにあるのか、探しながら歩く。意識すれば発見がある。いつもの畑の景色が、今日はなんだか鮮やかだ。そう思ってよくみると土の色が黒っぽい。あぜに群れるホトケノザの花も、昨日より増えたようだ▼ヒヨドリの鳴き声がある。鳥の視点で花々を眺めてみようと、しゃがんで地上20センチほどの高さにカメラをセット、シャッターを切る。目の前にホトケノザがうっそうと茂り、見通しは悪い。少し上げると今度は花畑が現れる▼同じ種類の草花はどうして似たような高さで花を咲かせるのか。動物行動学者の日高敏隆さんは子どものころ、そんな疑問を抱いた。ホトケノザしかり、イヌノフグリしかり、ヒメジョオンしかり▼答えの一つにたどりつくには、鳥よりもハチやチョウになった方がよさそう。ハチの身になれば、同一平面に花が咲きそろっていた方が、蜜を集めやすい。植物の側からすれば、ハチが飛び回ってくれるほど受粉の効率が上がる。どちらにも都合がいい▼そうやって立てた仮説を、実験によって立証してゆくのが科学の楽しさ。疑問の種はそこここに転がっているのに、それに気づかないまま私たちは通り過ぎる。季節の変わり目、もう少し歩みを緩めて観察したい。(け)
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ホトケノザ平面
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