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課題は共通している

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 東日本大震災から3年が経過した頃、津波で被災したある自治体の職員と話をした。

 これまで閉じていたパンドラの箱のふたが津波で突然開いてしまい、中に入っていたものがどっとまき散らされたような感覚だと、被災の感想をつぶやいていた。箱の中身とは、住民が将来に対して覚えているまちの課題や不安にほかならない。

 市街地が津波に襲われ、1700人を超える市民が命を落としたのだという。財産や住み家が奪われ、働く場所も激減し、若い労働力は大都市へと移動した。震災をきっかけに人口減少と少子高齢化に拍車がかかり、現在のまちのホームページによれば、人口はこの6年で2割も減少している。震災で20年、30年の時間が圧縮されて、課題の塊が一気に噴出したわけだ。

 緩やかだった人口減少の坂の傾斜が急になる。坂を下りながら、暮らしやすいまちをどうつくるのか、生活の基盤整備に向け、いまも再建の途上である。

 ひるがえって自分のまちを見つめてみる。桐生もまた、人口は緩やかな減少を続けており、高齢化率は着実に高まっている。津波や原発事故のような急坂への〝引き金〟となる大災害こそ、今のところ発生していないが、震災や洪水などはいつ起きてもおかしくない。抱えている根本的な課題は、被災地とさほど変わらない。被災地の方が数歩先を歩んでいるだけだ。

 人口減少や少子高齢化に対応したまちづくりを進めようと、桐生市は今年度から、立地適正化計画の策定作業に乗り出している。病院や商業施設といった拠点施設が集まる地区や、主に居住を促す地区などを定め、そこに建物やサービス、住民らを誘導し、集約するのだという。

 今後有識者が会合を重ね、市民の意見を聞き、2019年3月までに計画策定の予定だと、先日の本紙で紹介されていた。

 行政主導によるコンパクトなまちづくりへの取り組みだが、データに基づいた机上の計画が実際、思い描いたようなかたちになるのか。困難な取り組みになることは想像に難くない。

 免許証を返納したため移動に不自由を感じているといった声が投書欄に寄せられていたが、地域の暮らしやすさを保つ一方で、まちの機能を集約するには知恵と腕力とが求められる。

 似たような課題を抱える都市は全国に数多い。先進地に、学べるものは学んでいきたい。
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