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新しい暮らしの始まり

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 受験シーズンもほぼ終了し、これから移動の季節を迎える。多くの若者が生まれ育ったふるさとを離れ、見知らぬ地に居を構え、新しい生活をスタートさせる。新年度にかけて、この国の各地でいっせいに引っ越しの光景が繰り広げられるわけだ。

 右も左もわからぬ土地で新しい暮らしを始めるのだから、期待とともに不安を抱いたり、緊張を強いられたりするのは当たり前。自分の記憶をたどってみても、住み慣れた桐生を離れ、新たなまちで食料や日用品を購入できる店はどこにあるのか、大学までどんな手段を使い、どんなルートで通えばいいのか、探索しながら暮らし始めた記憶は今も鮮明だ。風邪をこじらせてしまい、病院を探した経験も忘れられない。似たような経験を持つ人も少なくないだろう。

 桐生には、100年の歴史を刻む群馬大学理工学部が存在する。定員は現在、1学年につき510人。前橋での教養課程を終えた後、彼らは活動拠点を桐生に移す。そのうち何割かは卒業までの3年や5年といった歳月を、キャンパス周辺の地域で過ごすことになるわけだ。

 せっかくならば、第二のふるさととして愛着を感じながら暮らしてほしいと、一市民として願わずにはいられない。これから社会に羽ばたく卒業生が、この地での暮らしをどう記憶するのか。充実した学生生活だったと振り返ってもらえれば、これほどうれしいことはない。

 初めて桐生で暮らし始める人の不安や緊張を和らげるため、迎え入れる側として何ができるのだろうかと、いつも考える。それは決して特別なことではなく、新しい隣人への小さな気配りのようなものだと思うのだ。

 例えば、災害の危険があるとき、頼れる大人が地域に一人でもいれば、暮らしの不安はだいぶ軽減されるのではないか。あるいは病気で発熱したとき、近くに信頼できる医療機関があれば生活の支えになるだろう。

 経験ではアパートの家主との交流を通じて地域社会とふれあう機会が多かった。ただ、そうしたケースが一般的なのかといえば、必ずしもそうではあるまい。手間はかかるがその都度、新たな回路をつなぐしかない。

 大学生の側が動いて地域住民と結びつく機会を設けるといった作業では、ハードルが高い。それよりも地域住民の側が学生たちとふれあう機会を設ける方が現実的。方法はあるはずだ。
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