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安全安心の裏表

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 先日、前警察庁長官の話に耳を傾けながら、街頭の防犯カメラが犯罪被疑者を特定するための端緒として役立っているという事実に改めて気づかされた。防犯カメラの台数が増えるとともに、画像の解像度なども増しており、客観証拠として大いに役立っているというのだ。

 防犯カメラというものに対し、強い不安を感じていた時代もあった。うしろめたさはないはずなのに、自分が撮影された画像がどう利用されるのか分からないことへの不安である。

 群馬大学理工学部の藤井雄作教授らが学内に「e自警ネットワーク研究会」を立ち上げたのは2003年4月のこと。

 市販のカメラとパソコンに独自開発のソフトを組み合わせ、安価な防犯システムをつくり、これを家庭や施設に設置して犯人の特定や犯罪抑止につなげようという活動で、桐生・みどり地域の学校をはじめ、協力可能な各施設内に取りつけては、実験したのを覚えている。

 システムを活用する人は何の目的で何を撮影するのか、誰が画像を管理するのか、明確にしておくことが大切だと、実験に立ち会った警察担当者らの声を聞いた。不用意に公道が映りこんでしまうケースに対しても、プライバシーを侵害しないよう慎重に構えていた記憶がある。犯罪に備える一方で、使い方によっては自分たちの自由を縛るおそれのある道具でもある。身構えながらの運用開始だった。

 それから10年以上がたち、e自警ネットでは今、町会や自治会といった広がりのある地域を対象に、公共空間での実証実験にも乗り出している。地域にカメラを設置する際、住民どうしで合意をとりつける。画像閲覧のルールも自分たちでつくる。運用面までを含めた地域ぐるみの実験だが、個々のプライバシーへの配慮が今も大きな課題であることに変わりはない。

 政府は組織犯罪処罰法改正案を閣議決定した。テロなどの重大犯罪を計画している組織的犯罪集団が、準備を始めた段階で処罰できる法律で、権力を持つ側が組織や団体を恣意的に取り締まるおそれはないのか、歯止めはきくのかと、懸念は少なくない。法を運用する人や組織に対する警戒感でもある。

 暮らしの安全安心のため、防犯カメラは受け入れながらも、犯罪を計画段階で防ぐ共謀罪には危惧を覚える。社会の息苦しさと無関係ではないはずだ。
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