「妄想工作」という独自の分野を開拓し、思わず笑ってしまうユニークな雑貨の数々を生み出している乙幡啓子さん(46)の県内初の作品展が、桐生市新宿三丁目のわびさびやギャラリーで開かれている。ホッケやアジなど魚の開きを模したペンケースや、傾けると目を閉じるダルマの置物など、一見「くだらない」ものでありながら、その芸術的な発想力と完成度の高さにうならされる雑貨がずらり並んでいる。
乙幡さんは桐生市生まれ。桐生西中、桐生女子高、津田塾大卒。会社勤務などをへて、2003年からインターネットの情報サイト「デイリーポータルZ」で日替わりの記事を書くライター陣に名を連ね、月1回ほどのペースで特集記事を担当している。
思いついたものを実際に工作し、その様子を記事化。映画「犬神家の一族」の有名なシーン「湖面から突き出た遺体の足」を氷で作ってグラスに浮かべたり、かつおぶしを人の形に切ってお好み焼きに乗せておどらせたり。そんな工作ネタが人気を集め、商品化の依頼も舞い込むようになり、14年に株式会社「妄想工作所」を設立した。
ホッケの開きを再現した「ホッケース」は、アジやサンマなど5種類展開され大ヒット。首が三つある赤べこ「ケルベコス」はカプセル玩具(ガチャガチャ)の人気商品になった。「犬神家の足」が作れる製氷機も商品化される予定だ。
作品展では、粘土彫刻の邪鬼を靴底にくっつけ、歩くと四天王の気分になれるハイヒール、幻の魚といわれるリュウグウノツカイを模した長さ4メートルのマフラーなど、思わずクスッとなる妄想工作27点を紹介している。
このほか、朝倉染布(桐生市浜松町)の超撥水(はっすい)ふろしきに群馬県内35市町村の形を迷彩柄にしたポンチョや、日本科学未来館(東京都江東区)の売れ筋商品で太陽系の惑星を缶バッジにした「スペースバッグ」、奇想天外なブローチの数々などは購入できる。
こうした工作を通じて、乙幡さんが表現しているのは「多様性」だ。「物事の見方は一つではなく、もっと自由で多様な見方があることを伝えたい。大まじめにふざけることで、笑いの中にどこか『なるほど』と納得してもらえるようなものを提示したい」
作品展は16日まで。午前10時から午後6時まで。16日は乙幡さん自身による消しゴムはんこのワークショップを開く。問い合わせはわびさびや(電0120・17・0144)へ。
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