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Channel: ウェブ桐生タイムス
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めぐりめぐる

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 イズミが死んだ。小さいころから「岡公園のイズミちゃん」は当たり前の存在で、死ぬ前日に元気な姿を見ていたから不思議な感覚だった。やがて桐生が岡動物園にゾウがいないのが当たり前になって、いつかイズミを見たことがない人ばかりになる。やっぱり不思議▼だけど感情を抜きにすれば、何事もそういうものである。この目は戦争を知らなくて、高度経済成長や東京五輪の熱狂、人があふれて活気づいた“古き良き桐生のまち”を経験していない。その代わりに戦後の平和な時代を、一瞬で遠くとつながる技術のある世の中を生きている。多くの人たちが身近な自然環境に心を向ける今を知っている▼どの時代に生まれて、どんな経験をしたら、より幸せなのかしら。今しか知らない身ではわからなくて、それは誰もが同じこと。生まれる時代も場所も選ぶことができないまま、偶然の出会いと取り巻く出来事、変化を受け止めて生きる。ときに抗って、受け損なっても進む。ただそれだけ▼そんなふうにつらつら考えて、改めてイズミと同じ時代に生きて、死を経験した偶然に感謝する。彼女にまつわる歴史や物語、人々が抱える思いをひっそり胸に刻んでおこうと思ったのだ。(
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