3時間56分という長い映画をシネマテークたかさきで見た。台湾のエドワード・ヤン監督の「●嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」。映画史上に残る傑作と評価されながら、権利の関係で日本では初上映以来25年間DVD化もされず、見る機会がほとんどなかった「幻の傑作」である▼が、人に誘われて見に行ったため、事前に知っていたのはそれくらい。内容をほとんど知らないまま映画館に足を踏み入れてしまった。この監督の作品を見たのは1作品のみ。肌に合った記憶が残るが、体力も気力も衰えを感じる今日、4時間も座って見ていられるか不安だった▼冒頭、説明的描写はなく、登場人物の関係性も、時代背景も分からない。主人公以外の顔も名前も判別できない状況で、物語の中に放り込まれたものの、緊迫感ある画面から目を離すことができず、飽きることなく結末へと連れていかれた▼それでも映画館でなかったらこの長旅は乗り切れなかっただろう。3月に市民文化会館で行われた映画「シン・ゴジラ」上映会で職員が「古きよき映画館の空気があった」と話していた。時にマナーの悪い客がいて、嫌な気持ちになることもあるが、映画館でしか生まれないものはあるのだ。(野)
※記事中の●は、牛へんに「古」
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