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温故知新

 「いまの球児たちは知らないでしょうね」。名将の思い出を語る教え子が、少しさびしそうにつぶやいた。「だからこそ名を冠した大会ができて良かった。球都桐生の礎をつくった人ですから」▼桐生高校を春夏通算24度も甲子園に導き数々の名勝負を演じた故稲川東一郎監督。その没後50年に合わせ、桐生球場で開催中の桐生地区高校野球交流戦に、今年から「稲川杯」の冠が付いた▼教え子とは、稲川監督が最後の夏の甲子園に出た1966年、エースとして8強に導いた前野和博さん(68)。社会人の東芝で活躍し、監督として全国制覇した経歴をもつ▼前野さんが今も忘れられない試合が、甲子園初戦の優勝候補・広島商戦。安打数は相手の約半分ながら機動力を絡めて得点し、強打者の三村敏之(のち広島カープ)を一、二塁から敬遠する奇策で接戦を制した▼「配球や打球方向を調べた上での徹底したデータ重視。当時珍しい筋トレやスイッチヒッター育成など、まさに近代野球の先駆けだった」と振り返りつつ、「地元球児には稲川野球のモットー“全力プレー”を期待したい」とエールを送る▼前橋育英、健大高崎が目立つ最近の県高校野球界。稲川杯を争う地元球児に、“球都復活”の夢を託す。(
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