脳科学者の茂木健一郎さんの発案で、環境やアートをテーマにトークや映画上映などを繰り広げる「夏至祭inKiryu」が24、25の両日、桐生市本町二丁目の有鄰館で開かれた。茂木さんとドキュメンタリー映画監督・森達也さんとの対談では、森さんが「善か悪かで単純化し、国民が熱狂する姿は気持ち悪い」「現実はもっとあいまい。二分化したらつまらない」などと述べ。最近の社会の風潮に警鐘を鳴らした。
対談は、森さんが監督したドキュメンタリー映画「FAKE」(2016年)上映後に引き続いて行われた。全ろうの作曲家として話題となった後、ゴーストライター騒動で謝罪した佐村河内守さんに密着し、仕事を失い自宅にこもる彼の心境に迫った話題作だ。
茂木さんから作品への思いを問われた森さんは「真実か虚偽か。黒か白か。善か悪か。メディアが単純化して国民が熱狂する。非常に気持ち悪いと思ったのが(同映画を)撮ろうとした理由」と語った。
「油絵で木を描くとき、葉を緑一色で描く人はいない。いろんな色が混在するから葉になる。世界を矮小(わいしょう)化したらつまらない。彼を撮ることで、その違和感を表現できないかなと思った」と述べた。
さらに「どんな人間も多面的で多重的で多層的。でもメディアは、いちばんみんなが喜び、分かりやすく、刺激的で視聴率が上がる面を伝える」と述べ、メディアは社会の“合わせ鏡”だと指摘した。
その上で「わたしはもっといろんな面を知りたいし、みんなにも知ってほしい。でも、なぜか一面だけを見て大騒ぎする人を頻繁に見るようになり、とても人生つまらなくしている気がする」と語った。
夏至祭は、茂木さんの友人で樹徳中高一貫校教諭の福田肇さんら、有志たちが実行委員会形式で初開催。環境やアートをテーマに、対談や鼎談(ていだん)、映画上映、コンサート、絵画展、写真展など多彩な催しを繰り広げた。
関連記事: