夏祭りの季節である。暑気払いを兼ねた八坂祭典があちこちで執り行われており、提灯に彩られた境内に、子どもたちの歓声や祭り囃子の朗らかな音色が響く、そんな風情のある風景に出くわす機会も多い。大切な食料である農作物が、これから順調に育ちますように、人びとを悩ます疫病が流行しませんようにと、盛夏のすこやかな暮らしを願い、天に祈りをささげる、素朴な信仰のかたちである。
いくつかの八坂祭典の現場を訪れる中で、祭りの執行に尽力している祭典委員の声に耳を傾ける機会が重なった。共通しているのは、「地域の未来を支える子どもたちのために」というその目的の方向性である。
踊りやお囃子を練習してきた子どもにとって、祭りは一生懸命に磨いてきた技能を披露する場、顔見せ公演の舞台である。周囲の大人に見守られ、評価を受け、そうやって自分の役割を見つけ出すことで、子どもは地域社会になじんでゆく。
少子化により各地の子ども会活動が次々と消えてゆくいま、子どもが集う祭りの存在意義がいよいよ増してきているのだと、強い思いをもって活動している祭典委員にも出会った。50代、60代の祭典委員が子どもだった頃と比べれば、子どもを集めるのに苦労する時代がこれほど早く到来することなど、予想だにしなかったはずだ。
ただ、だから子どもたちの役割を軽視するのではなく、むしろ子どもを中心に据えながら、地域の活性化や楽しみの要素を加味し、継続に向けた知恵を絞る大人たちも少なくない。
例えば、ある祭りでは地元の商店と協力し、寂しくなった露店の充実を図り、境内をいっそうにぎやかにした。そこで購入した金券は、祭りが終わった後も地元の各商店で利用できる仕組みにしている。子どもにとっては地元の個店を知る機会になるし、なによりにぎやかな祭りの思い出が記憶に残る。
地元の高校と連携し、高校生たちに鳴り物で花を添えてもらっているのだと、そんな話も聞いた。高校にとっては学校のPRになるし、地域住民の学校理解につながる。拍手を浴びれば生徒もうれしいはずだ。
祭りの喧噪に苦情もあるのだという。ただ、そうした声も切り捨てず、話し合い、一緒に楽しんでもらえるよう折り合いをつける。子どものためにという意識が地域を動かしている。
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