何となくぼんやりと、「こく」について考えてみた▼わかりやすいのは「こくのあるうまさ」といった「味」のイメージ。けれど、甘いとか辛いとかしょっぱいとか酸っぱいとか苦いとかいう、直接的な五味六味とは違う、形容詞的なもの▼漢字にすると「濃く」なのかなと想像するが、「濃い甘さ」と「こくのある甘さ」とは単純に違う気がする。「甘くて、こくがある」と言い換えれば、並び立つ甘さとこくは、やはり別物なのだろう▼「色」について考えてみた。インクに使うシアン(青)、マゼンタ(赤)などの純粋な色は、色としては強烈ではあるが、深みが足りない。けれどたとえば青に、赤と黄色をほんの少し混ぜると色が沈み、落ち着く。青が濃くなるわけでなく、赤と黄色が青と混ざって黒になり、その黒が青と混ざって濁るからだ▼こくというのも「濁り」なのかもしれない。ただ甘いのでなく、濁った甘さ。では何で濁っているかといえば、辛塩酸苦渋旨といった他の味。それが主張しない程度に加わり、生み出されるのがこくなのかも▼甘みにとっては、そうした他の味は「雑味」であり、余分なもの。でも、雑味があるからただ甘いだけでなく、深みや広がりが生まれる。じつは大事な、余分なもの。(篤)
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