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風車を見ながら考えた

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 千葉県の銚子市で、風力発電用の大型風車が幾本も立ち並ぶ景色と出合った。港町の低い家並みの向こう側に、白い風車がすっくと立ち、長い3枚の羽根がゆっくりと旋回している。

 これほどの数の風車が並ぶ景色を眺めたのは初めてで、新鮮なはずなのにどこか懐かしさを覚える、不思議な光景だった。

 観光施設の職員によると、銚子地域には複数の事業者が合わせて30基を超える風車を設置し、事業展開しているのだという。そこから生まれる電気エネルギーは人口6万人を超える銚子市民の暮らしをすべてまかなえるほど。海と陸との間で空気の移動があるため、安定した風が一年中吹き続けるといった地理的環境を、精いっぱい利用したエネルギー利用術である。

 ひるがえって桐生・みどり地域では、冬の季節風こそ強いものの、それ以外は穏やかなだけに、年間して安定した電力供給となると課題が残る。事業者もその点は理解しており、不安定な風よりも日本有数の日照時間に着目し、太陽光発電の普及に力を注いでいるのが実情だ。

 化石燃料や原子力といったエネルギー源にできるだけ頼らず、太陽から贈与される光熱をはじめとした自然エネルギーの利用法を考えることは、これからの暮らしを考える上でどうしても欠かせない視点である。

 新しい技術だけに課題も山積している。例えば、老朽化したり壊れた太陽光パネルを適切に処分する方法や、資源の再利用を促す仕組みづくりなどには、開発や改善の余地が多い。

 2030年代半ばには、使用済みパネルの排出量が急増するといわれる。ただ、総務省の調査結果をみると、太陽光パネルに含まれているおそれのある有害物質の情報などが、製造業者・事業者・処分業者間で共有されているとはいいがたい。

 災害などで壊れた太陽光パネルに人が触れると感電するおそれがあることや、使用されている有害物質が流れ出す可能性もあるわけで、こうした事情を周辺の住民に説明するといった視点も踏まえなければならない。

 より安全な処分方法や再利用の見通しが立てば、自然エネルギーを安心して普及するための推進力となる。風車の広がる光景が誕生するまでにも、幾多の課題があったはずだ。太陽光パネルの広がる風景から、不安の影を取り除くためにも、早急に取り組みたい課題である。
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