Quantcast
Channel: ウェブ桐生タイムス
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2430

志功壁画と孫、初対面 石井頼子さん「芭蕉」を訪問

$
0
0

 棟方志功(1903~75年)の孫に当たる石井頼子さん(61)=東京都在住=が22日、桐生市本町五丁目のレストラン「芭蕉」で志功壁画に初めて対面した。石井さんは「天馬のまわりに得意中の得意の女人像、楽しみながら描いたのでしょう」とにこやかに語り、半世紀の封印を経て“発掘”された大作の存在感に「本物を見られてよかった」と満足そうだった。

 志功の「天馬之図」は1953年5月11日、「芭蕉」初代の小池魚心(1907~82年)の依頼で描かれた。「世界のムナカタ」として有名になる前から板画集を持ち志功作品を愛していた魚心が、自身の最大の作品である店のしっくい壁に足場を組んで待ち受けた。志功は馬を中心に舞う女人6人、日月、北斗七星、魚、宝珠、小槌、ツバキなどを180センチ×300センチの壁いっぱいに、一気に描いた。

 しかし魚心は「ここには合わない」と、一夜にして絵を塗り込めてしまう。伝説となっていた壁画が再び世に出たのは2008年10月。2代目主人の小池一正さん夫妻をはじめ、見守る関係者が歓声を上げた鮮やかさだった。

 石井さんは志功の長女の長女で、小2から中2まで同居、唯一画室に入ることを許されていたという。「仕事をする志功中心の家。本人は静かで、やさしい人でしたよ」と語る。現在はフリーの学芸員として志功研究を続け、日本民藝館運営委員でもある。

 志功の肉筆画は、襖絵(ふすまえ)はあるが壁に直接描いたものはないという。実物は予想以上のすばらしさで「芭蕉」独特の空間にもほれ込んだ石井さん。「1954年春には馬と人をテーマにした『華狩頌』を制作している。中国東北部の通溝古墳の壁画をモチーフにしたもので、この時期にやりたかったことがわかります」と見る。

 魚心がなぜこの絵を封印したかは謎のままだが「今では色味も抑えられて、よかったのでは」。高崎市で開催された展覧会の最終日に桐生訪問がかない、山鹿英助さん(77)、奈良彰一さん(71)らと歓談した。
関連記事:


Viewing all articles
Browse latest Browse all 2430

Trending Articles