怖がりなくせに、寄り道が好きな子どもだった。通学路を大きく外れると怒られるからちょっとだけ脇道にそれてバラ園を眺め、田んぼのあぜ道を歩いてカラスノエンドウの実を鳴らして帰った▼故郷を離れ、一人暮らしを始めた大学時代は、知らない土地ということもあいまって、積極的に回り道を楽しんだ。ただし、やや方向音痴のため、現在地を見失うことも。スマホなんてなかった時代だから夏の暑い日、迷いに迷って熱中症になったのも今は笑い話だ▼桐生女子高校で、NPO法人DNAの指導によって行われた公開授業「未来の教室」。19歳の大学生から30代の社会人まで人生の先輩約60人が学校を訪れ、自分の経験談を語り、生徒の進路に対する思いを引き出した▼先輩の経歴は将来の目標がなかった人から受験に失敗した人、就職に苦戦した人、転職した人などさまざま。進路に関わる授業というと、夢をかなえた人の話を聞くことが多いが、人生は思わぬ道に入り込むことの方が多い。「道は1本ではない」ことを伝えるこの授業は、高校生や大学生に有効に思えた▼気ぜわしい年の瀬だが、来し方を思い返し、行く先を考える時間もつくりたいものである。(野)
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