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Channel: ウェブ桐生タイムス
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先人の知恵

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 黒曜石という石がある。ガラス質の火山岩で主に黒色。破片が鋭いため、石器の材料となった。岩宿遺跡で黒曜石製のやり先形尖頭器を発見した相沢忠洋さんが後に「その美しさが神秘的に思えた」と書いたように〝石器〟という言葉から受ける武骨なイメージはない▼岩宿博物館の石器作り体験教室で、小菅将夫館長は「黒曜石と鹿の角はどちらが硬いですか」と問うた。答えは黒曜石。「硬い金づちで叩けば粉々になってしまう。昔の人はそれを知っていたのです」。その解説にはっとする▼何度も取材し、分かっていたことだったが、硬度を測る機械もない時代、試行錯誤する中で獲得した岩宿人のすごさに改めて気づく。石器を道具として使わなくなった現代人は知識として分かっていても、本当に分かっているといえるのだろうか。どんなに科学が発達しても、この感覚の鈍化にはもっと危機感を抱かないと、後で大きなしっぺ返しをくらう気がするのだが▼岩宿博物館では赤城山を襲った弘仁9(818)年の大地震をはじめ、大間々の大火や渡良瀬川流域の台風被害を取り上げた企画展を開催中だ。過去の災害で得た経験は、きっと未来の災害の減災に生きると思う。(
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