1970年代に一世を風靡(ふうび)した伝説のロックバンド「レッド・ツェッペリン」のリーダーで、世界三大ギタリストの1人と称されるジミー・ペイジのステージ衣装を、横振り刺しゅうの「現代の名工」大澤紀代美さん(77)=桐生市天神町=が完全再現した。ペイジの音楽を忠実によみがえらせるライブで世界的に活躍するギタリスト、ジミー桜井さん(54)=米ロサンゼルス在住=の依頼にこたえたもので、桜井さんは「細部まで完璧」と、大澤さんの技に驚きと称賛を惜しまない。
桜井さんは、コピーやカバーとは一線を画し、ツェッペリンを「リバイバル」(蘇生)する活動を20年以上続ける音楽家。演奏やステージでの動作にとどまらず、ギターやドラムなどの楽器やアンプなどの機材まで当時の年代物を使用し、ツェッペリン独特の音色を精密に再現する第一人者として世界的に知られている。
自身のバンド「ミスター・ジミー」で2012年に東京で行ったライブでは、うわさを聞きつけて来場したペイジ本人が「君は僕を知っている」と称賛し話題に。14年から米国に拠点を移し、有名コピーバンド「レッド・ツェッパゲイン」に在籍。その後ミスター・ジミーとして米国で始動し、17年からは本家ツェッペリンのドラマー、故ジョン・ボーナムの息子ジェイソン・ボーナムさんのバンドにも参加している。
そんな桜井さんが、日本の刺しゅうアートの第一人者で国の卓越技能者「現代の名工」である大澤さんに依頼したのが、ツェッペリンの1975年の英国ライブでペイジが着ていた「ドラゴンスーツ」の再現だ。
黒のジャケットとパンツの随所に極彩色の龍が舞うデザインで、ペイジの歴代ステージ衣装の最高峰とされる1着。大澤さんはこれを当時の写真などを参考に縫いあげ、受注から半年後の2015年9月に納品した。
日米で評判に
この衣装は日米で評判となり、桜井さんは「衣装にうそがあると演奏にも魂が入らない。大澤さんの刺しゅうは細部まで完璧。本物が持つ『気』が観客に伝わる」と大満足。都内のライブでこの衣装を見た大澤さんも「桜井さんが一回り大きく見えた」と喜んだ。
昨年12月末には、米国のロックバンド「クワイエット・ライオット」のドラマーとして有名なフランキー・バネリさん(66)らと東京で公演後、桐生市を訪問。日本文化に造詣が深いバネリさんは大澤さんの作品に触れ「アンビリーバブル」(信じられない)を連発し、刺しゅう入りの陣羽織を着てドラゴンスーツの桜井さんと記念撮影に興じた。
一つのことを極めようとする桜井さんの姿勢に、同じアーティストとして共感したという大澤さん。「ジミー桜井という日本人が世界的に評価され活躍していることと、そんな彼が桐生の技術を気に入ってくれたことを、多くの人に知ってほしい」と話す。
本五で展示中
ドラゴンスーツは現在、桐生市本町五丁目の大澤さんのギャラリー(マルキン2階)に展示されている。
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