2017年の漫画単行本の推定販売金額で電子版が紙を初めて上回ったという▼出版科学研究所によると、紙の単行本は前年比14・4%減の1666億円と過去最大の落ち込みとなる一方、電子版は同17・2%増の1711億円を売り上げた。▼逆転以上に気になるのはコミックス全体の市場規模の減少で、雑誌も含めると前年比2・8%減。桐生第一高校のデザイン美術系の生徒を対象にしたプロ漫画家による特別授業で、講師の三友恒平さんが「雑誌に新人を育てる余裕はない。電子コミックは原稿料は安いが、チャンスは多い」と話していたことを思い出す。ただ、有象無象の電子コミック業界。見つけてもらうだけでも大変そうだ▼ひと足先に電子化の波にさらされた音楽業界では今、1970年代の日本のポップスが国内外で注目を浴びている。さまざまな境界を超えるインターネットの光の部分。祖父母と孫が同じ1曲を一緒に歌う、そんな歌声喫茶が生まれる可能性もあるのだ▼海賊版の撲滅も重要だがいたちごっこになりがち。いまこそ、出版業界が一つになって海賊版よりも使い勝手のよい「場」をつくらなければ、日本の文化を守ることはできないだろう。(野)
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