東日本大震災の発生から7年を迎えた11日、桐生地区でも各地で大地震発生を想定した住民主体の防災訓練や犠牲者追悼の黙とうが行われ、震災の教訓を風化させないとの思いや自然災害に備える意識を新たにした。特に少子高齢化が進む黒保根町では、高齢者でも集まりやすい緊急避難場所を小集落ごとに決め、全住民が避難する自治会主催の訓練を初実施。より安全な避難のあり方を模索している。
「まちのイメージは捨ててくださいね」。そう語るのは桐生市黒保根町上田沢町会長の松島精吉さん(67)。山あいで小集落が分散する同地区は、少子高齢化や人口減、空き家化が急激に進む“先進地”だ。
黒保根町内の自治会でつくる桐生市第22区(河合正夫区長)が昨年に続き行った3月11日の全町防災訓練。同地区の湧丸地区6集落のうちの一つ、上ノ平南地区の訓練を訪ねた。
市指定避難所はもちろん、市指定緊急避難場所である集会所も、高齢者が歩いて行くには遠い。そうした集落がほとんどの同町では今回初めて、高齢者でも集まりやすい近場の避難場所を、小集落ごとにあらかじめ決めた上での避難訓練を行った。
上ノ平南地区では訓練開始直後から、事前に決めておいた工場跡広場に住民が集まり、防災リヤカーを使って自力避難が難しい高齢者を運ぶなどして、10分後には外出中を除く集落全員の避難を終えた。
「動ける人だけが特定の場所に大人数で集まる避難訓練をしても、この地域では役に立たない」と語る松島町会長。上ノ平南地区で訓練に参加した松島幸男さん(55)も「田舎だから年寄りが多く、若い人が少なくて大変だが、その分横のつながりは濃い。大震災の教訓を生かし、地域の現状にあった準備をしたい」と語る。
一方、同市広沢町一―三丁目の自治会でつくる桐生市第12区(丹羽康博区長)も同日、昨年2月の自主防災会発足後初の避難訓練を行った。各自治会や関連団体の役員ら約100人が自宅から徒歩で、市指定避難所の市立桜木公民館に避難した。
避難後の住民間の話し合いでは、「避難途中で子どもやお年寄りが危ない場所を見つけた」「危険箇所をマップに落とし込む機会をつくりたい」などの意見も。大震災の教訓を生かし、「災害時の避難所運営について地域で準備したほうがいい」などと前向きな提案も出た。
発生時刻に黙とう
同日の大震災発生時刻である午後2時46分、桐生市はサイレンや防災行政無線など(みどり市は事前の防災情報メール)で1分間の黙とうを呼び掛け。桐生市市民文化会館で同日開かれた県内13高校の研究発表会でも、高校生が発表を中断して1分間の黙とうを行い、震災犠牲者を追悼した。
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