桐生で最晩年を過ごした作家、坂口安吾をしのぶ第29回安吾忌の集い(安吾を語る会主催)が10日、有鄰館煉瓦蔵で行われた。安吾の作品をさまざまな形で取り上げてきた集いだが、今回は初企画「高校生、安吾を読む!」。地元3校の演劇部、放送部の生徒たちが「桐生通信」全8編の朗読にチャレンジした。
「桐生通信」は1954年3月から12月にかけて新聞に連載されたエッセー。桐生に移住して2年後の安吾が、商魂たくましい町の様子や旦那たちの性向、小中学校の雄大な校庭、映画館と自転車の関係、底抜けのお祭り好き、桐生川のアユ、家主の書上文左衛門とゴルフなど、独自の観察眼で描き出した。
「安吾作品を読むのは初めて」という高校生たちに、桐生生まれの安吾の長男、坂口綱男さんは「わくわく、ハラハラです」。ビジュアリスト手塚眞さんは「これまでで最高のイベント」と絶賛した。
出演は桐生第一高校演劇部の和田萌さん、鈴木知寿さん、黒田由希さん、桐生南高校演劇部の毒島美香さん、仲内さくらさん、渡邊晏弓さん、村上陽向子さん、桑原匡真さん、八下田美咲さん、翁川想太さん、大島花凛さん、樹徳高校放送部の淺沼雄登さん、渡辺蘭さん、岸和佳奈さんの計14人。これに桐生市本町四丁目で「ヴァイオリン工房」を営む伊藤丈晃さん(38)がビオラの演奏を添えた。
桐一の和田さん(3年)は「緊張しましたが、内容が伝わるよう、心を込めて読みました」といい、「坂口安吾は名前だけ知っていました。今回で身近に感じられたので、ほかの作品も読んでみたい」。桐南の翁川さん(2年)は「安吾作品は今も語り継がれ、愛されるだけの特徴があると思う」と感想。綱男さんや眞さん(手塚治虫の長男)との出会いも「父の仕事にかかわり続けるのはすごいこと」と感激の面持ちだった。
今回はパート1で、次回は他校の高校生たちに安吾作品に挑んでもらう計画だ。夕方には会場を移して懇親会が開かれ、東京や新潟からの参加もあって交流を深めた。
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