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予算案という見取り図

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 学生たちが新しい進路に向けて旅立つ、そんな季節が近づいている。就職、そして進学と、将来への抱負を抱きつつ、まちを離れる若者の数は多い。

 自分自身の高校時代を振り返ってみても、友人の多くは桐生を離れ、故郷に戻ることなく新しい土地に根を下ろし、家庭を持ち、家を構え、そうやって今も生活を続けている。距離にして約100キロ、東京という日本最大の都市の引力は、若い世代にこそ強くはたらく。

 先日、桐生市の2016年度予算案が示された。「私」の納めた税金が、「私たち」の暮らしをよりよくするために、どう使われるのか。予算案はその見取り図ともいえるわけで、為政者の描くまちの将来像が反映されている。納税者として関心を払わないわけにはいかない。

 「私たち」というとき、そこには高齢者から乳幼児、さらには将来生まれてくる世代まで、広く含まれる。市民が毎日利用している道路一つとっても、いつかの事業計画によって整備されたもののはずで、そう考えると、いまの市民の暮らしや産業を支えているインフラストラクチャーや、さまざまな公共サービスは、すでに亡くなった先人たちからの恩恵でもある。

 同様に、いまを生きる私たちが描くまちの将来像は、やがて自分がいなくなった後のまちで暮らす市民にも影響を与えることになる。当たり前のことなのだが、予算案の中の具体的事業を読みながら、考えは広がる。

 国立社会保障・人口問題研究所の試算によると、桐生市の人口は2040年には約7万8000人にまで減少すると、推計が出ているそうだ。若者が減り、高齢者の数もその割合も増える。だからこそ子育て世代を支える施策に厚く予算をつけ、教育に力を入れるという流れはごく自然である。雇用を生み出すため、産業基盤の整備に力を入れるというのもよく分かる。

 一度は桐生を離れた世代が故郷に戻りたいと思ったとき、戻りやすい環境を整えることができればいいと思う。ただ、それは公共サービスを充実させればすむ話ではなく、働く場の充実や他者を受け入れる地域社会の形成など、大きな課題でもある。

 人口が減ったとしても、増えたとしても、個々の市民が生き生きと暮らすためにはどんなサービスが必要なのか。そんな視点も大切。事業をよく眺めながら点検してみていいはずだ。
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