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うるう年のうるう日、安吾引っ越し記念日、桐生の集いに60人出席

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 「堕落論」「白痴」「桜の森の満開の下」などで知られる作家、坂口安吾(1906~55年)が桐生に転居した2月29日にちなみ、同夜、「安吾引っ越し記念日」の集いが開かれた。主催は安吾を語る会(奈良彰一代表)で、この日に合わせて記念誌「安吾と桐生」が刊行された。

 坂口安吾は52年のうるう日、三千代夫人とコリー犬ラモーとともに桐生市本町二丁目の書上邸に移住。ここで古墳巡りをしたりゴルフをはじめ、「夜長姫と耳男」「信長」ほか多くの短編小説やエッセー、紀行文を書き、長男も生まれて、穏やかな日々を送った。しかし「4年に一度の引っ越し記念日」を迎えることなく55年2月17日に急逝した。

 長男の綱男さん(62)は「1歳半で父を亡くし、東京に移って40年も桐生の土を踏まなかった。記憶に鮮明なのは“岡公園のガチョウ”で、父に連れられて見たのでしょう。桐生に年に一度は来るようになって、安吾の記憶も刷り込まれていきます」と語る。

 集いでは文芸評論家の七北数人さんが「安吾と桐生―融通無碍(ゆうずうむげ)の新境地」と題して講演。「新潟に生まれ、東京に出た安吾は成り行きまかせのように京都、取手、小田原、伊東と転居して、桐生には3年、一番長い。純文学の短編や、ライトノベルのようでいろんな落とし穴のある変わった青春小説を書き、エッセー『桐生通信』はゆったり小さな幸せを書いた。これまでの安吾にない、新境地を感じる」と述べた。

 桐生出身のピアニスト下山静香さんによるコンサート「サティを弾く」もあり、下山さんは安吾が愛したサティを、共通項をさぐるように解説しつつ、ていねいに演奏した。

 集いには東京や新潟などからも約60人が参加。続いて懇親パーティーも開かれ、映画「白痴」を監督した手塚眞さんも妻の漫画家岡野玲子さんと出席。桐生ロケの思い出を語り合うなど、交流を深めていた。
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