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Channel: ウェブ桐生タイムス
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小さな知らせ

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 3月のある晴れた日、保育園のそばを歩いていると、ピアノのメロディーとともに子どもたちの元気な歌声が流れてきた。その音に身をあずけると、足が勝手にリズムをとって、ずんずんと進んでしまう。足の裏を通じてやわらかい土の感触が伝わってくる▼いつのまに登場したのか、すぐそばをモンシロチョウが通り過ぎていく。その軽やかな羽ばたきもまた、子どもたちの音楽に同調しているようで、すっかり気持ちが春めく。音もないのに、音が聞こえるような飛び方。子どもの声だけでなく、あちこちから音楽が鳴り響いているようだ▼もっとも、それは当たり前のことで、気温が上昇して虫たちが動きだせば、それをえさとする鳥たちの活動も盛んになり、さえずりも多重奏になる。ネコたちが交わす鳴き声、通りで立ち話を楽しむ人の声と、冬の静けさに比べ、とにかくにぎやかな春の音の景色である▼ただ、のどかな景色のはずなのに、のんびりと春を楽しむ気分にも浸りにくい。簡単には解きほぐしがたい、暗いニュースばかりが、大音量で響きわたる時代である。せめて地域紙は、日常の生活の中にある、小さくても明るい知らせを届けようと、改めてそんなことを思った。(け)
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